ステロイドホルモンはなぜ最高の抗炎症剤になりうるのか?
なぜステロイドをやめるとリバウンドが起こるのか?

 人間の免疫細胞は、敵を認識した時にその敵をやっつけるための免疫のタンパク質を作るために、遺伝子の発現をONにしてセントラルドグマにそって、その敵をやっつけるためのタンパク質を作り出し始めます。これを「免疫の遺伝子のスイッチがONになった」とか、「遺伝子が発現した」といいます。そして病気の症状が出ます。このときにステロイドを投与すると、一挙に全ての症状が消え去ります。皆さん、ステロイドは何をしたと思いますか?ステロイドは免疫の細胞の核の中にある遺伝子の中に入り込んで、免疫の遺伝子のスイッチのONをOFFにしてしまうのです。つまり遺伝子の働きを一時的に消滅させてしまうのです。この働き以外に本当はもっと大事な働きがあるのです。それについて少し詳しく書いておきましょう。

 病気が出たときにステロイドを投与すると、一挙に戦いが止められて症状が消えてしまい、病気が治ったように見えますね。実はステロイドを投与して症状が消えるのは、単に戦いの開始を命令する転写因子がOFFになっただけではないのです。これまで私はステロイドの効果を、専ら免疫の遺伝子のON/OFFについての説明に力点をおいていたきらいがあります。なぜならば、患者さんは全て免疫のスイッチがONにされたものをステロイドによって一時的にOFFにされることを繰り返してきただけで、病気そのものが治らないということに気がついた人たちの症状についてのみ説明してきたためです。ところが近頃症状が取れても「死ぬまでステロイドを使いなさい」と言われる患者さんが多くなってきたので、ステロイドの本当の意味についても詳しく説明する必要に迫られました。ここでステロイドが単に転写因子をONをOFFに変えるだけではない、もっと本質的なステロイドの機能について大切な話をしてあげたいと思います。

 これからの話は、病気が起こっていないときにステロイドを投与することによって何が起こっているかの詳しい説明となります。まず具体的な話から始めましょう。例えば気管支ぜんそくの人が医者にぜんそく発作を予防するために「朝晩ステロイド入りのスプレーを用いて、口から1日2回死ぬまで噴霧器で投与しなさい」と言われ、疑問に感じて当院に受診される人がたくさんいます。つまり症状が起こっていないのに、なぜ投与させるのでしょうか?その意味を分かりやすく述べてあげましょう。他にも具体的な例としては、ステロイドを少し塗るだけでアトピーの症状がなくなってしまったにもかかわらず、入院させ続けて1ヶ月間にわたってステロイドホルモンを毎日毎日塗り続けるアトピー治療が多くなっています。症状がないので、免疫と異物との戦いは既に終わってしまうにもかかわらず、間違った治療が盛んに全国の病院で行われています。その意味についても述べて挙げましょう。かなり難しくなりますがついてきてください。

 

 まずはじめに、免疫細胞が異物を認識してそれをやっつけるために、どのようにして熱を出したり痛みを出したり炎症を起こしたりするかのメカニズムを述べる必要があります。これを理解しておかないとステロイドを投与したときになぜ症状が消えてしまうのかを理解することは不可能であるからです。

 分かりやすい話から始めましょう。皆さんはまず病気であるかどうかの指標として、痛みや熱、さらに腫れや発赤などをまず考えませんか?まさにこのような症状に直接関わっているのがプロスタグランディンであります。特に痛い時に痛み止めを飲むのは何のためでしょう?このプロスタグランディンの働きを抑えるためであるのです。このような薬を非ステロイド系抗炎症薬といわれることはご存知でしょう。普通の医者は急性の上気道炎が起こった時の発熱や痛みや炎症を抑える薬だと言って出す薬は、全てこのプロスタグランディンを生合成するのを抑えているだけなのです。ときにはリウマチなどにおける痛み止めや熱がある時にも同じ薬が使われるのです。それではこのような病気の時に炎症症状を起こすプロスタグランディンはどのようにして作られるのでしょうか?まずそれを理解しましょう。

 全ての細胞の膜は食べ物から取り込まれたアラキドン酸という不飽和脂肪酸である脂質が細胞膜に蓄えられます。このアラキドン酸を含んでいる細胞膜が、体外から入ってくる異物によって物理的化学的な刺激を受けたり、細胞膜が損傷したりすると、この細胞膜を作っている別のリン脂質であるホスホリパーゼA2が活性化し、細胞膜にあるアラキドン酸が細胞質内に遊離します。細胞質内に遊離したアラキドン酸は、細胞内のシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素によって代謝されて、プロスタグランディンG2(PGG2)がまず作られます。このPGG2から痛みを強める物質であるプロスタグランディンE2 (PGE2)やプロスタグランディンI2(PGI2)などの多種類のプロスタグランディン(PG)が合成されます。このPGE2とPGI2の2つのプロスタグランディンは、血管拡張作用を持つと同時に、ブラジキニンという痛みをもたらす化学物質の働きを増強するのです。つまりPG自身が痛みを持つものではないということを知ってください。

PGI2は血管を拡張するのみならず、血小板凝集抑制作用と血管の平滑筋弛緩作用を持っています。さらにPGから血小板凝集を引き起こすトロンボキサンA2 (TXA2)も作られるのです。このように互いに相反する作用を持つPGI2とTXA2が作られるのは、実に興味深いことでありますが、なぜなのかはまだ解明されていません。

 プロスタグランディンには発熱を起こす作用もあります。アラキドン酸から作られたプロスタグランディンは視床下部にある体温調節中枢に働いて体温を上昇させる仕事もしているのです。従ってプロスタグランディンの産生を抑える薬は、痛みを止めると同時に解熱作用もあるのです。従って解熱剤と鎮痛薬は同じ薬となるのです。ところが、アスピリン(バファリン)やロキソニンなど、あらゆる非ステロイド性の抗炎症薬は、直接プロスタグランディンの働きを抑えているのではなくて、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きを抑えるので、プロスタグランディンが合成されないだけなのです。

 もうひとつアラキドン酸から作られるロイコトリエンの話をする必要があります。皆さん、小野製薬が出しているオノンという気管支喘息の薬を知っていますか?このオノンはどうして喘息の発作を止めることができるのでしょうか?上に述べたように、プロスタグランディンは細胞膜にあるアラキドン酸にホスホリパーゼA2という酵素が働くと最後に作られると言いました。このアラキドン酸にまずホスホリパーゼA2が働いた後に、シクロオキシゲナーゼ(COX)ではなく、別の酵素であるリポキシゲナーゼ(LOX)が働くとロイコトリエン(LT)というタンパク質ができます。このロイコトリエン(LT)にも様々な種類があります。LTA4、LTC4、LTD4、LTE4などであります。このロイコトリエン(LT)は白血球であるリンパ球のみならず、大食細胞や肥満細胞や単球などからも作られるのです。オノンは気管支粘膜のロイコトリエン受容体に、ロイコトリエンがつく前に先に結合してしまいLTの働きを阻害します。このロイコトリエンが気管支粘膜にひっつくと、強力な血管収縮作用と強力な気管支平滑筋の収縮作用を持っているので、喘息発作が悪化するのです。この気管支平滑筋の収縮作用を抑える薬がオノンであり、喘息発作が楽になるのです。私が医学生時代の頃には、このロイコトリエンはSRSと呼ばれていたことを覚えています。後にこのSRSがLTであることが判明したのです。

 注意しておきますが、プロスタグランディンにしろロイコトリエンにしろ、同じ仲間が何種類もあることを知っておいて下さい。これらのひとつひとつの働きを全て勉強するのも大変難しい仕事になります。いずれにしろアラキドン酸から作られる経路は2種類あります。ひとつがプロスタグランディン系であり、もうひとつがロイコトリエン系であります。

 さぁ、ひとまずどのようにして痛みや発熱や炎症が生じるかについて説明し終わったので、ここで最強の抗炎症剤といわれているステロイドホルモンが、どのようにして熱を下げたり痛みをとったり、様々な炎症症状を抑えたりすることができるかについて深く説明する段階にきました。

 まず体内にステロイドを医者が投与します。ステロイドは脂質ですから、簡単に白血球や大食細胞の脂質でできている細胞膜を貫通し、細胞質に入り込みます。するとこの細胞質にあるステロイドと結びつく特異な受容体と結合すると、さらに核の中に入り込むことができます。もう少し詳しく書きましょう。細胞質にはステロイドが結びつくレセプターが、既にヒートショックタンパク90(Hsp90)という名前のタンパク質と結びついて待っています。ところが、ステロイドホルモンが細胞外から細胞膜を通って細胞質に入ってくると、このHsp90が結びついたステロイドレセプターの複合体のステロイドレセプターにステロイドが結びつきます。すると新たにできたこのステロイドホルモンとステロイドレセプターの複合体が核の中に入っていくことができるのです。核に入り込んだこの複合体は、核の染色体にある転写調節領域のプロモーター領域に結合します。例のごとくセントラルドグマによって、その部位のDNAの遺伝子をONにさせます。するとRNAポリメラーゼが働き、その部位の遺伝子情報を持ったmRNA(メッセンジャーRNA)が作られ、さらにこの情報が翻訳されてリポコルチンというタンパク質が合成されます。

 リポコルチンという医学専門用語を初めて目にされた人が多いと思いますが、しっかり覚えておいてください。このリポコルチンこそがステロイドが作り出す最も重要なタンパク質であるからです。このリポコルチンが、全ての免疫の遺伝子のONをOFFにしてしまうのです。先程述べたホスホリパーゼA2やリポキシゲナーゼ(LOX)という酵素を作らせなくするのも、このリポコルチンであります。この2つの酵素の働きがなくなると、プロスタグランディンもロイコトリエンも作れなくなってしまうので、見かけの熱や痛みや炎症がなくなってしまうのです。

 それでは敵が人体に入ってきた時に、それを処理するためにプロスタグランディンやロイコトリエンを作る遺伝子がONになってどんどん炎症が起こっているのに、なぜステロイドを入れることによってOFFになってしまうのでしょうか?つまり皆さんご存知のように、私は何回も何回も医者がステロイドを投与すると、炎症の遺伝子のONがOFFになってしまい、免疫の働きがなくなり病気を治せなくなるとと言い続けてきましたが、本当はその表現は一部正しくないのです。正しくは、ステロイドは直接にプロスタグランディンやロイコトリエンを作る遺伝子のONやOFFに関わっているわけではなく、本当は新たにステロイドの命令でリポコルチンを作ることによってシクロオキシゲナーゼ(COX)やリポキシゲナーゼ(LOX)の酵素タンパクを作る遺伝子の働きを間接的にOFFにした、と言うべきなのです。つまりCOXやLOXの遺伝子をONにするためには、酵素タンパクであるホスホリパーゼA2という酵素タンパクが絶対に必要なのです。このホスホリパーゼA2を作らせる遺伝子をONにならないようにリポコルチンがしてしまったために、自然とCOXやLOXの酵素タンパクを作る遺伝子がOFFになってしまったのです。遺伝子学や免疫学は面白いでしょう。最高ですね!だって今私が書いていることを世界中のどんな医学者も考えたことがないことであることを知っておいてくださいね!ワッハッハ!

 ついでにステロイドをやめた時の離脱症状、つまりリバウンド症状がなぜ出るのかを説明しましょう。以上は、ステロイドがプロスタグランディンやロイコトリエンを作らなくさせるメカニズムを書き記しました。ところがステロイドホルモンは何もリポコルチンを作らせるDNAの転写調節領域のプロモーターにひっつくだけではないのです。ステロイドホルモンはリポコルチン以外の多くの遺伝子の発現を抑制することができるのです。そして様々な抗炎症作用を示すことができるのです。大きく分けて3つの抗炎症作用を示すことができます。

 ひとつは、今述べたプロスタグランディン以外に、様々な生理活性物質やサイトカインや一酸化窒素のような炎症を起こすメディエーター(炎症の仲介物質)の産生を完全に抑えることができます。皆さんは今まで何回も何回もサイトカインを耳にされてきたでしょうが、一酸化窒素が炎症に関わっていることを初めて知ったでしょう。一酸化窒素は血管弛緩作用やマクロファージの活性化や抗菌作用など、様々な炎症に関わっているのです。サイトカインというのは、免疫や造血や炎症反応の制御に関わっている細胞間の情報伝達を司る微量なタンパク質であるのみならず、内分泌系や神経系にも極めて重要な機能も果たしています。サイトカインのなかには、インターロイキン(IL)、主要因子α(TNF-α)、血小板活性化因子(PAF)などが炎症に関わりがあります。インターロイキンは白血球によって分泌され、白血球どうしのコミュニケーションを行う生理活性物質といわれるものです。例を挙げればIL-1、IL-2、IL3、IL-4…など無数にあります。TNF-αはマクロファージによって産生され、主要細胞を壊死させるタンパク質です。PAFは好塩基球や血管内皮細胞や他の様々な炎症細胞から放出され、血小板の活性化を亢進させ、炎症による出血を止めたりすることができるのです。

 2つめは、免疫細胞が炎症巣に移動するには、細胞どうしがひっつき合う必要があるのですが、そのために必要な接着分子の発現を抑えます。このような接着分子がなくなると、血管から白血球が炎症巣から出ることができなくなったり、様々な免疫細胞がリンパ節に移動したりすることができなくなり、従って免疫と異物との戦いができなくなります。様々な接着分子があり、インテグリンファミリー、セレクチンファミリー、免疫グロブリンスーパーファミリー、シアロムチンファミリー、カドヘリンスーパーファミリーなどに分類されます。

 3つめは、白血球やリンパ球のアポトーシスを促進します。ステロイドによってリンパ球の幹細胞などは遺伝子を変えられると、癌になったり異常な働きを起こすことがあり、それを避けるために自ら自殺するのです。

 以上は、免疫系に対する様々な影響を書き記したのでありますが、ステロイドは60兆個の細胞の細胞膜から簡単に細胞質に入り、かつ核に入って人間が生き続けるために必要な様々な転写因子と結びつくことによって、正常な人間の遺伝子の発現を異常にONにしたりOFFにしたりして、訳の分からない病気を作ってしまうのです。この研究もどんどん行われるべきでありますが、ステロイドの副作用を研究したところで金が儲からないので誰もしないのです。いや、学者の中にはステロイドの副作用を学問として研究している人もいるのでしょうが、その研究成果は悪い話ばかりであるので絶対に表には出てこないのです。なぜならば人間が生き続けるためにはステロイドホルモンは絶対に必要なホルモンでありますが、多すぎても少なすぎても問題を起こします。だからこそ副腎皮質で作るステロイドホルモンの量は脳の視床下部と下垂体で完全にコントロールされているのです。悲しい話です。

 たまたまステロイドホルモンは以上に述べてきたように、病気の症状を一挙に良くしてしまうので、患者に摂っては快楽をもたらすことができるので70年以上もの間医療で使われ続けていますが、元の病気を治すことはできないどころか新たなる遺伝子病を作り続けるのです。麻薬と同じですから、ひとたび使うとリバウンドが出るのでやめることができないのです。たまたま東洋では漢方薬や鍼灸を中国人が発明してくれたので、ステロイドを中国医学の手助けでなんとかリバウンドを乗り越えて完全にやめることができます。ところが欧米においては中国医学の伝統がないので、ひとたびステロイドを使うと絶対にやめられないので、使えば使うほど病気が作られるので欧米の製薬メーカーは大もうけしています。かの悪名高きノバルティスなどは毎年6兆円近くも稼いでいます。残念なことです。病気を治すのは患者の免疫であるにもかかわらず、世界中の医学者は誰も口にしません。残念なことです。日本の武田製薬は売り上げは1兆5000億円程度であります。中国医学がなければもっと稼ぐことができるでしょうに。アッハッハ!

2014/05/15