慢性活動性EBウイルス感染症で死亡した人気声優について

 今回は下に掲げる平成28年2月3日の毎日新聞の記事についてコメントします。CAEBVという病気で、人気声優の松来未祐さんが38歳の若さで平成27年10月に亡くなられたという記事についてのコメントです。

 CAEBVというのは、英語で“Chronic Active Epstein Barr Virus”の略です。日本語では、『慢性活動性エプシュタイン・バールウイルス感染症』であります。まさに私がいつも言っているように、最後に人類に残された病気の原因であるヘルペスウイルスの中でも、最も恐るべきウイルスであるEBウイルスに感染されて亡くなられたのです。実は、EBウイルスよりももっと恐ろしい敵がいるのです。5番目のヘルペスウイルスであります。知る人ぞ知るサイトメガロウイルス(CMV)でありますが、これについては必ず後で詳しく書きます。どうしてCAEBVで死なざるをえなかったのかの意味づけをするつもりでしたが、時間が切れました。次回コメントするつもりです。それまで、下の新聞記事をしっかり読んで自分で考えてみてください。新聞記事の間違いも指摘し、正しながらコメントも付け加えていきます。

 みなさん、アメリカではトランプ旋風が吹き荒れ、全世界がトランプのtwitterで毎秒毎秒、一喜一憂しています。なぜトランプはtwitterで人類最悪のエゴイズムを発信しているのでしょうか?ジャーナリズムを、とりわけアメリカを代表する新聞であるThe NewYork TimesやWashington Postをはじめ、TV界のCNNやABCなど、ほとんどすべてのメディアを嘘つき呼ばわりして、自分だけが嘘つきでない戦略をとって愚かな大衆を騙し続けています。(ちなみに私は毎日The NewYork Timesを購読しております。)本当はメディアも資本主義の宣伝隊ですから、自分たちが伝える記事の中には、いわゆるエスタブリッシュメントにとって都合の悪い記事は捻じ曲げられたり削除されたりするのは当たり前のことなのです。

 結局民主主義というのは、勉強しない愚かな大衆のために生まれたわけですから、大衆迎合主義になることは当然であり、大衆におもねることによって政治家は完全に国民を支配することができます。もちろん民主主義といわれる大衆迎合主義を支配しているのは金でありますから、大衆の一票でも多く勝ち取れば政治権力を獲得し、好きなことを言い、好きなことができるので、嘘をつこうが真実を語ろうが、票を一票でも多くとった方が勝ちなのです。トランプのような金が世の中すべてを支配しているという人間にとっては、すべてのゴールは金儲けですから、何を言っても構わないのです。なぜならば嘘をついたら罰せられるという法律がないからです。ただ信用を失うことはありますが、大衆はテレビやメディアの報道やトランプのtwitterが真実であるか嘘であるかわからないし、信じさせればいいだけですから、嘘を毎日毎日何千回も言えば嘘も真実になってしまいます。日本のテレビや新聞にも同じことがいえます。報道を伝える記者たちも何が真実かどうかを見極める証拠はほとんど持っていません。ただ生き抜くためにお金を稼ぐことが目的ですから。アッハッハ!

 とりわけ医学に関してはそうであります。免疫を抑える薬はすべて病気を作るだけでありますが、気ちがいである私以外は「免疫を抑える薬はすべて毒薬だ」と誰も言いません。みなさん、ご存知のようにアメリカの国民皆保険となるはずであったオバマケアもトランプは廃止すると言っていますが、これだけがトランプがやろうとしている政策の中で唯一正しいのです。なぜならば、世界中の国民皆保険は、免疫を抑えて病気を作って、医者や製薬メーカーがお金を儲けるために国民の全てからお金を収奪するシステムであるからです。トランプ自身は医学については全く無知ですから、“逆知らぬが仏”という結果になるのです。アッハッハ!ついでに言えば、オバマがオバマケアをやろうとした時、医薬業界は全く反対しませんでした。なぜならば国民皆保険となるオバマケアをやればやるほどアメリカの医薬業界が日本の医薬業界と同じくらいに毎年成長産業となり、人類が滅びるまで無限にお金が儲かることが分かっているからです。アッハッハ!もちろんオバマもトランプも医学のことは何も知りません。アッハッハ!長いイントロダクションになりましたが、新聞やテレビで報道される医薬に関する報道のすべては医薬学会が意図的に自分たちの都合のいいように流した記事にすぎないので、最も間違いが多いので、この記事についてもその間違いを正しながらコメントを書きます。アッハッハ!

 ヘルペスウイルスは8種類から成り立っていますが、4番目のEBV(エプシュタイン・バール・ウイルス)は、抗体を作るリンパ球であるBリンパ球に好んで感染します。ちなみに末梢血液中のBリンパ球にEBウイルスが感染することがあり、このEBウイルスが感染したBリンパ球を「異形Bリンパ球」といいます。もちろん骨髄から作られたばかりのBリンパ球にも感染します。このような異形Bリンパ球がリンパ節で増殖するときに、CAEBVとわれる感染症となったり、バーキットリンパ腫という悪性リンパ腫になっていくのです。この骨髄で生まれたばかりのBリンパ球は、既に述べたようにB1リンパ球といわれます。このB1リンパ球には、BCL(B cell receptor)と呼ばれるIgMが必ずついています。このIgMは、自然抗体であることも私のホームページを読んできた人はおわかりでしょう。この自然抗体であるIgMは、IgMを作る遺伝子の組み合わせによって、違った何十億を超える種類のIgMが作られるのです。この生まれたばかりのBリンパ球にEBVが感染すると、感染したEBVは、はじめは潜伏感染という状態でおとなしくしていますが、潜伏感染された患者の免疫が落ちると、EBVが突然増殖しだし、このBリンパ球は、EBVによって活発な増殖能を持つリンパ芽球様細胞に変わります。これをLCLといいます。LCLとは英語で“Lympho-blastoid Cell-Line”といい、“blastoid”が「芽球様」という意味であり、“Line”は「同系列の細胞の仲間」という意味であります。LCLになったBリンパ球は、細胞分裂を繰り返すとともに、細胞の寿命を決めるテロメアというDNAの長さが短縮して、というよりも、細胞の染体が不安定化し、死滅してしまうLCLもあるのですが、どういうものか、なかにはテロメアが長くなって不死化(immortalize)するLCLも出てくるのです。不死化というのは寿命が永遠に続くことです。寿命が永遠に続く細胞はこの不死化したLCLの中から生まれる、つまりガンになることもあるのです。この不死化のメカニズムについてはまだ誰も知りません。 

実はそのメカニズムは、Bリンパ球に入り込んだEBウイルスがBリンパ球の核に入り込み、さらに核にあるDNAに入り込んでアトランダムにBリンパ球のDNAの遺伝子を変えてしまうのです。これを遺伝子の形質転換、英語でトランスフォーメーションといいます。

 

元来あらゆる遺伝子は、それらの遺伝子によって様々なタンパクを作るために存在します。これを遺伝子の発現といいます。つまり設計図である遺伝子が、その遺伝子によって決められたタンパクが実際に形を現すという意味で「遺伝子が発現した」というのです。遺伝子が発現したときに出来上がったタンパクの働きによって、その遺伝子を持っている生命体の形や性質が決まり、生命活動が行われるのです。この形や性質が変わることを形質転換と言います。ここでは「Bリンパ球が形質転換する」という意味は、正常なBリンパ球が作り出すタンパクが変わってしまい、そのタンパクの働きや性質が変わり、異常な事態が起こってしまうのです。ところが、ヘルペスウイルスによる遺伝子の形質転換がどのようにして生ずるかについての研究がまだまだ十分になされてないというのが現状であります。そんなに難しい研究ではないと思うのですが、研究者でない私の目から見ると、まるでそのような研究が故意に避けられているような感じがします。なぜでしょうか?皆さん、考えてください。

 さて、生まれたばかりのナイーブBリンパ球のレセプターが自然抗体IgMであることは既に説明しました。Bリンパ球のレセプターを英語で“B-cell receptor”といい、略語でBCRといいます。生まれたばかりのBリンパ球には2種類のBCRが必ずBリンパ球の細胞膜ひっついています。ひとつはIgDという抗体であり、もうひとつはIgMという抗体であります。このIgMのことを自然抗体IgMというのです。また、膜についている抗体ですから、このようなIgDやIgMはBCRというのですが、膜抗体ともいいます。この自然抗体であるIgMを持っているBリンパ球に、EBVが感染した当初は潜伏感染でありますが、免疫が落ちると俄然このリンパ球は増殖を始めます。なぜ免疫が落ちると潜伏感染が増殖感染に変わり、どんどんEBウイルスが感染しているBリンパ球を増やしていくかについても誰も完全に回答を出していません。いずれにしろ、正常なBリンパ球は、元来は二次リンパ節に組織から運ばれた抗原がBCRに結びつき、様々な刺激を得て初めて形質細胞に変わります。形質細胞に変わると、同じ抗原を認識する同じIgMを産生するBリンパ球がどんどん増殖します。ちなみに1個の形質細胞は1秒間に2000個のIgM抗体を産生します。さらに刺激を受けると今度は、抗体のクラススイッチを行い、必要に応じて様々なサイトカインによって自然抗体IgMをIgGに変えたり、IgAやIgEになっていくのです。さらにSomatic hyper mutation(ソマティック・ハイパー・ミューテーション、日本語で体細胞高頻度突然変異)を起こして、Bリンパ球のレセプターが抗原とさらに強く結びつくようにレセプターの遺伝子が突然変異をして、レセプターのタンパクが変わってしまうのです。Somaticは体細胞と意味であり、hyperは高頻度という意味であり、mutationは突然変異という意味であります。

 ところが、EBVが感染したBリンパ球は、上に述べた正常な抗原との出会いやサイトカインの刺激が一切ないのにもかかわらず、EBVの遺伝子によって無理矢理に形質細胞に変えられてクローンのIgMを作るのみならず、クラススイッチをさせられて同じクローンのIgGを作り、どんどんIgMやIgGを血中に放出し続けるようになります。もちろんIgAやIgEにもクラススイッチさせてしまうこともあるのです。従って、EBVが感染したBリンパ球に作らせたIgMもIgGも抗原なしに作られたものですから、どちらも自然抗体IgMと自然抗体IgGといっても間違いではないのです。さらに論理を進めていくと、EBV感染によって不死化したBリンパ球は単にIgMやIgGのみならず、IgEやIgAも作ってしまうので、これらの抗体も自然抗体IgEや自然抗体IgAといってもよいでしょう。

 例えば、アレルゲンが全くないのにアレルギーの症状が突然ひどくなる人がいます。当然アレルーでステロイドをたっぷり使ってきた患者さんであり、免疫を抑えてきた人ですから、必ずEBVに感染しています。一度EBVに感染してしまい、潜伏感染の状態が続くと、免疫は絶対に殺すことができないので、永遠に人体に住み続けます。しかもストレスがかかり(いやなことが多くなれば)それに耐えるためにストレスホルモン、つまりステロイドホルモンが出続けている間に、必ずEBウイルスは増殖してしまい、潜伏感染から増殖感染になり、どんどん増え続けるEBウイルスはさらに新しいBリンパ球に感染するので、上記に述べたように自然抗体IgEがますます多く作られてしまいます。従って原因不明のアレルギーというのは、EBVがBリンパ球にIgEを作らせた病気であると断言しても許されると考えています。この考え方をあらゆる原因不明の病気にしていくことができるのです。言い換えると自己免疫疾患を含めて、あらゆる現代の原因不明の病気や特発性の病気といわれる病気の原因は、全てEBVに感染したBリンパ球が作り出した多クローン性の抗体によるものだと言っても過言ではないと考えています。

 実はEBウイルス(EBV)よりももっと巧妙な働きをしているのがサイトメガロウイルス(CMV)であることも後で詳しく述べるつもりです。CMVはEBVの兄貴であり親玉であるといってもよいのです。もっとEBVについて具体的に説明しましょう。CMVも基本的にはEBVと同じ挙動をすることを知っておいてください。CMVの勉強を続ける中でわかってきたのです。

 さて、これからが山場の話となります。EBVはひとつの種類のBリンパ球、言い換えると1種類のIgMだけを作るクローンのBリンパ球だけに感染するのではなくて、非常に様々な多種類の異なったIgMを持った別のBリンパ球に感染し、それらのリンパ球が同じクローンのBリンパ球となっていくのです。このようにEBVは膨大な数のBリンパ球に感染するのです。その結果、本来、抗原を認識して様々な段階を経て初めてBリンパ球は抗体が作れるにもかかわらず、EBVがBリンパ球に感染することだけで、多クローンの抗体、つまり多種類のIgMを作ることになります。これは極めて恐ろしいことです。しかし実際に起こっていることです。

 なぜ怖いのでしょう?なぜならばEBVがリンパ球に感染することによって作られた様々な自然抗体IgMのみならず、さらにクラススイッチした自然抗体IgGや自然抗体IgAや自然抗体IgEが人体の様々な成分と結びついてしまうとどうなるでしょうか?何の目的もなしに、たまたまEBVが多くのBリンパ球を形質転換させて、形質転換させて作らせた膨大な種類の抗体が血中にどんどん流れ始めると、交差反応(クロスリアクション)が起こり、この無数に作られた抗体と結びつく人体の成分が必ず存在しますから、結びつくとまさに様々な不都合を生み出し、いわゆる見かけは自己免疫疾という病気が生じてしまうのです。つまり自己免疫疾というのは、以前から言っているように、化学物質をIgGで戦うのみならず、EBVやCMVが関わっていると考えています。

 ここで交差反応(クロスリアクション)について説明しておきましょう。日本語で交叉反応とも書きます。体内にアレルゲンを含む様々な抗原が侵入すると、免疫反応によって抗体を作り、抗体がある特定の抗原(アレルゲン)だけを認識し、抗原抗体反応を起こし、様々な炎症が生じます。交差反応とは、その特定の抗原(アレルゲン)以外のものにも反応して、炎症やアレルギーを起こすことをいいます。なぜ交差反応が起こるのでしょうか?作られた抗体は絶対に最初に出会った抗原だけに反応するのではないのです。少し異なった抗原(アレルゲン)の構造が似ていると、最初に作られた抗体が両者を識別できないからです。このような抗体を相同抗体ともいいます。

 ここで、忘れないうちに自然抗体IgG、自然抗体IgA、自然抗体IgEを半自然抗体IgG、半自然抗体IgA、半自然抗体IgEとそれぞれ言い直したほうが良いということを説明します。なぜかというと、クラススイッチをするためには必ずBリンパ球がCD40を作り、かつBリンパ球と結びつくTリンパ球がCD40Lを発現する必要であることを説明する中で気づいたからです。そこでまず、なぜ半自然抗体IgG、半自然抗体IgA、半自然抗体IgEといったほうが良いかを説明しておきます。

 EBウイルス(EBV)が最も感染しやすいのは、粘膜の上皮細胞やBリンパ球であります。とりわけEBウイルスは粘液を産生する細胞に侵入したがります。言い換えると外分泌腺細胞に感染しやすいのです。人間の遺伝子は23000個余りであることはご存知ですね。EBウイルスは遺伝子を80種類持っています。これらの細胞に感染しているEBウイルスが感染しているときには、80種類のEBウイルスの遺伝子は、ほとんど発現していないのです。ただし、潜伏状態においてはEBウイルスの感染を続けるために必要なタンパクを作るために、特定の数少ない遺伝子のみを発現し、EBウイルスの遺伝子(ゲノム)は、円環状のエピソームとして存在しています。EBウイルスのゲノムは本来二重鎖DNAでありますが、細胞の免疫から逃れるために、円環になって隠れているのです。ところが、宿主細胞が複製されるときに、EBVのDNAを一度だけ複製し、宿主に同調し、円環の形で2倍に増えます。円環になって隠れているこのような感染においては、EBウイルスの遺伝子はエピソームの形になっているといいます。エピソームとは、宿主細胞の染体の外と染色体の内の両方に遺伝子(遺伝因子)が存在する形をとりうるDNAの呼び名でもあります。このようなエピソームの状態を取るのはEBウイルスだけではありません。実は大腸菌もこのようなエピームの状態を取ることができるのです。

 大腸菌には雄と雌の細菌があり、雄の細菌は細胞質に性決定因と呼ばれるF因子(F伝)を持っています。このF因子(F遺伝子)はFプラスミドとも呼ばれます。このF因子を持っている大腸菌を雄といい、円環になっています。F因子を持っていない大腸菌を雌といいます。雄の大腸菌はチューブを伸ばして、雌との間に細い通路を作り、これを通してF因子だけが注入される場合と、F因子とともに雄の大腸菌のDNAもずるずると注入することができます。雄のF因子だけではなく、雄のゲノムの一部が雌のゲノムに注入されることがあります。この状態になった雌の細菌を“High frequency of recombination cell”といい、略してHfr細胞といいます。このようにDNAの移動が起こるときに形質転換が生じます。形質転換とは、いろいろな経路でDNAの移動が起こることによって、その後に続く現象のことです。上記のF因子が関わる現象も形質転換のひとつであります。つまりF因子(+)の雄からF因子(−)へ遺伝物質が移動したので形質転換と言えるのです。

 わかりにくいので、もう一度F因子とからめながら形質転換がEBウイルスに感染したBリンパ球でどのように起こるかを説明しなおしましょう。忘れないうちに結論から書いておきましょう。F因子(+)の雄がEBウイルスの遺伝子に相当し、F因子(−)の雌がBリンパ球の遺伝子に相当することです。形質転換は英語で“transformation”といい、遺伝子を導入することにより生物の性質を変えることです。F因子を持っている雄(F+)とF因子を持っていない雌(F-)の細菌が接合してチューブによってつながると、雄の環の染体が1か所切され、その場所からF因子が挿入され、F因子の染体の複製が始まります。こうして雄の染体に新しく出来上がった染色体は、その一端から細い橋を通って雌の細胞の中に移動します。しかしながら、途中で接合が破れると、雄の染色体の一部だけしか雌の細胞に入らず、雌の細胞の中で入ってきた雄の染色体の一部と雌の染色体との間の組み換えが起こります。上に述べたようなF因子のように細胞質内に染色体から遊離して存在すると、自分の染色体に組み込まれたの二つのをとることのできる因をエピソーム(episome)と呼びます、エピソームにはF因子のほか、薬剤耐性を生み出すR因子(resistant factor)などもあります。エピソームとは、ゲノムとは別個に存在し、複製されることができる環状DNAともいえます。まさにこのエピソームの定義にふさわしいのが、Bリンパ球に環状二本鎖DNAで感染したEBウイルスが環状EBウイルスとなって潜伏感染する状態そのものなのです。本格的なEBウイルスについてのどんな研究書を読んでも形質転換がどのように起こるかについて一行も書かれていなかったので、こだわって書きました。

 なぜ形質転換にこだわって書いたのでしょうか?始めに書いたように、F因子(+)の雄がEBウイルスの遺伝子にあたり、F因子(−)の雌がBリンパ球の遺伝子に相当するのです。つまり、F因子(+)の遺伝子がF因子(−)の遺伝子に入り込んでF因子(−)の伝の形質転換をしたように、EBウイルスの遺伝子がBリンパ球の遺伝子を形質転換してしまうことを説明したかったからです。この形質転換はサイトメガロウイルスについても当てはまることであります。サイトメガロウイルスについては後で詳しく書いていきます。

 このEBウイルスによるBリンパ球の遺伝子の形質転換によって半自然抗体IgGや、半自然抗体IgAや、半自然抗体IgEが生まれるのです。本来、人体に異物が侵入し、Bリンパ球が反応して抗体を作らない限りはIgGやIgAやIgEが生まれないのに、EBウイルスに感染したリンパ球の遺伝子にEBウイルスの遺伝子が入り込み、形質転換したために生じた、いわば強制されて無理やりに抗体が作られ、かつそれから無理やりにクラススイッチさせられたので、自然に生まれた自然抗体というよりも、無理やり生じさせられた自然抗体という意味で、半自然抗体と名付けたほうがふさわしいと思いませんか?

 とにかくEBウイルスとサイトメガロウイルスは、従来の免疫学では理解できない病気を起こしてしまうのです。それではどうしてEBVやCMVに感染している人は非常に多いのにもかかわらず、訳のわからない原因不明の病気が起こるのでしょうか?答えは簡単です。免疫を抑制し続けた人たちがEBVやCMVの餌食になってしまうのです。つまりEBVやCMVによる遺伝子の異常が生じてしまうからです。

 感染した宿主である人間の免疫が落ちてしまうと、様々なEBVやCMVは隙を見て増殖します。この増殖したEBVやCMVはあらゆる細胞に感染していきます。と同時に、増殖するために必要なタンパク質をEBVやCMVは作る必要があります。EBVやCMVの80種類の遺伝子の多くが発現し、タンパクを作り始めます。自分のコピーを作ると次の正常な細胞に感染していきます。次々と感染した細胞は死んでいきます。普通はウイルスが細胞に感染すると、多くの場合はキラーT細胞や大食細胞に食い殺されるのでありますが、EBVやCMVの感染細胞の遺伝子は形質転換を受けているので、細胞が死ぬ時には、殺されるというよりも細胞が溶解していくので死んでいきます。いわゆる専門用語で、溶けるように細胞が死んでいくので、「溶解感染をする」といいます。いわゆるネクロースシスといわれる壊死に陥ってしまうのです。ちなみにネクロースシスは、アポトーシスに対する言葉であることも知っておいてください。このような溶解感染を起こして細胞を壊死させたEBVやCMVは、細胞を次々に溶解殺人をしてから隣の細胞に感染しようとしたときに、潜伏感染で発現しなかった80種類の様々なEBウイルスの遺伝子が初めて発現するのであります。なぜならば新しく別の細胞に感染するためには、EBウイルスも自分自身の遺伝子を次のEBウイルスにそっくり伝達するためにコピーする必要があると同時に、自分のタンパクを作るためにもEBウイルスの遺伝子の発現が必要であるからです。

 ところが、このEBウイルスの遺伝子が発現して、様々なタンパクを作れば作るほど、そのタンパクを異物として認識するリンパ球に見つけられやすくなります。なぜならばリンパ球はタンパクしか認識できないからです。特にEBウイルスだけを認識できる特異的キラーT細胞が、EBウイルスが感染した細胞もろとも殺そうとするときに免疫との激しい戦いとなり、症状がますます激烈になり、新しい病気(病名)がEBウイルスによって生まれだすのです。難しいことを書けば、感染のときにEBウイルスが発現している遺伝子はLMP-1と、LMP-2AかLMP-2Bであります。このLMP-1“Latent membrane protein-1”の略であり、日本語では「潜伏感染膜タンパク」といい、発がん活性を持っていることも知られています。ここで注意を喚起しておきますが、EBウイルス(EBV)はもとより、CMウイルス(CMV)は、秘密だらけであることを知っておいてください。しかもなんとBリンパ球が持っているCD40を発現させ、かつB細胞がリンパ芽球様細胞、つまり感染細胞にさせることができるのです。リンパ芽球様細胞は、英語で“Lympho blastoid cell”といいます。このCD40からのシグナルが持続的に活性化されると、転写因子であるNF-κBが活動し始め、Bリンパ球の核の中に入り込んでBリンパ球のDNAをONにし、Bリンパ球の働きを無理やりトランスフォームしてしまい、様々な不必要な抗体を作り出してしまうのです。このようにEBウイルスが感染したBリンパ球は、俄然外部からの刺激が全くないのにもかかわらず、一人舞台を始め出すのです。

 重複しますが、トランスフォームについてもう一度書きます。トランスフォームというのは、形質転換ともいい、無理やりにBリンパ球に自然抗体IgMから自然抗体IgGを作らせてしまうのです。上に私はEBウイルスが感染したBリンパ球が自然抗体IgGを作らせると書きましたが、その根拠は詳しくは書きませんでした。まさにLMP-1がBリンパ球にCD40を発現させることによって、無理やりクラススイッチを行わせたのです。本来、Bリンパ球が持っているCD40というのは、Th1リンパ球が持っているCD40Lと結びついて初めて活性化され、クラススイッチが行われるのです。元来、クラススイッチはTh1リンパ球が持っているCD40Lと抗原提示細胞に抗原を提示されて初めて活性化されるにもかかわらず、EBVやCMVの遺伝子によってBリンパ球が無理やりにクラススイッチをさせられ、様々な抗体を作らせてしまうのです。これだけの話でもEBVやCMVがいかに難敵であるかがおわかりでしょう。

 それでは、どのようにしてクラススイッチしてIgG抗体やIgA抗体やIgE抗体ができるのでしょうか?さきほど、「本来、Bリンパ球が持っているCD40というのは、Th1リンパ球が持っているCD40Lと結びついて初めて活性化され、クラススイッチが行われるのです。」と書きました。どういう意味でしょうか?CD40もCD40Lも既に書いたのですが、“Co-stimulator”とか、“Co-stimulatory molecule”というのですが、日本語では、共刺激分子とか補助刺激分子といいます。Bリンパ球が抗体のクラススイッチをしたり、体細胞高頻度突然変異を行うためには、必ずTリンパ球のCD40Lという分子と結びつかなければ絶対に起こらないのです。つまりBリンパ球が活性化するためには、Tリンパ球のCD40Lが必要なのであります。それではこのようなCD40やCD40Lはどのようにして作られるのでしょうか?

 まずCD40はどのように作られるのかを説明しましょう。まさにEBウイルスのLMP-1がBリンパ球に無理やりCD40というCo-stimulatory moleculeを発現させることによってであることはすでに説明しました。それではTリンパ球のCD40LというCo-stimulatory moleculeはどのようにして作られるのでしょうか?発現されるのでしょうか?それはBリンパ球に感染したEBウイルスがBリンパ球のクラスⅡMHC(MHCⅡ)がリンパ球の膜に提示されるときに、HLA-DRというレセプターに乗せて提示されます。そうすると、数多くのT細胞の中で、これを認識するT細胞が刺激され、CD40LがT細胞にどんどん作られ、その結果、Bリンパ球のCD40とT細胞のCD40Lが結びつき、クラススイッチを行わせるのです。本来、Bリンパ球が持っているCD40というのは、Th1リンパ球が持っているCD40Lと結びついて初めて活性化され、抗体のクラススイッチが行われるのです。従って、EBウイルスが無理やり作らせる自然抗体IgG、自然抗体IgA、自然抗体IgEという表現は、半分正しくて半分間違いという面があります。というのは、CD40はLMP-1は無理やりBリンパ球に作らせます。一方、CD40Lは、EBウイルスに感染したBリンパ球が、抗原提示細胞として、それを認識するヘルパーT細胞を刺激して、CD40Lを作らせたのですから、これは自然な出来事と言えます。念のために書きますが、抗原提示細胞の仕事をするのは3つあります。樹状細胞と、大食細胞と、Bリンパ球であります。Bリンパ球に感染したEBウイルスを切り刻んでペプチドにし、Bリンパ球が持っているMHCIIというタンパクと結びつけて、Tリンパ球にEBウイルスを提示するのです。その意味でCD40を作るのは、無理やり作らせるという意味で無理やり抗体と言ったほうがよいのかもしれませんね、ワッハッハ!見方を変えれば、抗原と出会って作られた抗体ではないので、自然抗体IgMと同じく自然抗体IgGと呼んでもいいと考えたのですが、一方、CD40Lは自然に生まれたものですから、自然抗体IgGとは半分意味が違うので、半自然抗体IgG、IgA、IgEというべきでしょうか?ワッハッハ!

 ここで再び、CAEBV感染症というのが、どういうものかについてまず詳しく述べましょう。この世に人が死ぬというような病気はなくなってしまいました。にもかかわらず、病気がどんどん増えています。なぜでしょうか?人類が快楽のために作り上げた近代文明は産業革命以来250年間で1億種類の化学物質を作ってしまいました。この化学物質がアレルギーと膠原病を作ってしまったのです。と同時に、人類が病気を古来から恐れてきたのは、人体に侵入してきた病原体のために原因も分からずに死んでいったからです。ところがワクチンと抗生物質ができ、栄養状態がよくなり、免疫の力も強くなり、かつ衛生状態もよくなったので、病原体によって死ぬことは皆無であると言っても許されるほど、病気で死ぬ人はなくなりました。

 ところがワクチンが全く役に立たない病気だけが最後に残りました。これが8種類のヘルペスウイルスであります。この中で最も怖いのが4番目のEBウイルスと5番目のサイトメガロウイルスであります。さらにヘルペスウイルスの6番目と7番目と8番目はもっと恐ろしいかもしれませんが、世界を見てもほとんど研究されていないのです。松来さんの記事をもとにして、一番研究されているEBウイルスの本体に迫ってみたいと思います。

 病気はなぜ見つからなかったのか。(なぜ早く見つからなかったのか、という疑問自身が間違っているのです。その理由を解き明かすために、まずCAEBVという英語の単語ひとつひとつの意味について説明しましょう。まずCAEBVというのは、英語で“Chronic Active Epstein Barr Virus”と書きます。日本語では「慢性活動性EBウイルス感染症」と訳します。まず「慢性」という意味は、「活動性」にかかっているのですが、実はこの病名もおかしいのです。EBウイルスはひとたび人体に侵入すると、絶対に殺しきれません。従って慢性に人体にしているという意味ではないのです。やはり慢性的に活動しているという意味での慢性であります。従ってまず、“chronic”という形容詞を“chronically”という副詞に変えるべきです。次に“Active”は、何が慢性的に活動しているのかお分かりになりますか?世界中の医者は、EBウイルスが活動していると誤解しているのです。半分は正しいですが、半分は間違いなのです。“Active”には2つ意味があるのです。ひとつは、免疫が落ちている間に感染から溶解感染が起こっているということです。その意味ではこの病名は「免疫低下性によってヘルペスが継続して増えている」という意味の病名に変えるべきです。2つめは、実は患者の免疫が取り戻されてヘルペスウイルスを免疫が認識し、とりわけキラーT細胞がEBウイルス感染細胞もろとも殺そうとしている病気の状態が活動的であることを示しているのです。従ってこのような慢性活動性という病名は、病気の実態を示しているわけではないので避けるべきなのです。もちろんEBウイルスと関わる病気ですから、「EBウイルス感染症」という病名は正しいのです。従って、CAEBVを早く見つけるとかいう記事は意味をなさないのです。

 従ってCAEBVという感染症は、別名、「EBウイルス関連Tリンパ球増殖性疾患」ともいわれます。なぜTリンパ球が増殖しているのかは、後で説明します。さらにEBウイルスは増殖しだすと、単にBリンパ球と上皮細胞に感染するだけではなくて、ヘルパーT細胞や、あるいはキラーT細胞や、NK細胞や、大食細胞にも感染してしまうのみならず、赤血球や血小板にも感染するので、「EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症」という名前もつけられるのです。英語で、“EBvirus-associated hemo fagocytic lympho histiocytosis”といいます。略してEBV-HLHともいいます。「血球貪食性リンパ組織球症」は「血球貪食症候群」とも呼ばれます。なぜ「血球貪食性リンパ組織球症」は「血球貪食症候群」と言い換えてもいいのかは後で説明します。かつ血球貪食というのはどういう意味であるかも後で詳しく説明します。つまり何がどんな血球をどんどん食い尽くしていくのかとか、なぜ血球が貪食されるのかについて、誰も説明したことがないので私がしてあげますからご期待ください。ちなみに、T細胞にも感染すると書きましたが、EBウイルスが感染したTリンパ球は、単一の種類のリンパ球が増殖しているのがほとんどで、これを「モノクローナルな増殖を示している」といいます。ときには、数少ない違った種類のリンパ球が増殖している時もあります。これを「オリゴクローナルな増殖」といいます。

 まずリンパ組織球症という意味について説明しましょう。リンパ組織にいる組織球が増えているからです。リンパ組織とは、リンパ球を増殖させ、さらに抗体を産生する組織のことであり、具体的にはリンパ節、リンパ小節、胸腺、脾臓、扁桃などであります。リンパ節は外から触れたり見ることができるので、リンパ組織の代表はリンパ節と考えてください。組織球というのは、大食細胞と考えておいてください。というのは、リンパ組織には必ず大量の大食細胞が住んでいるのみならず、あらゆる組織に存在しているからです。組織とはなんでしょうか?結合組織と考えてください。結合組織はどこにあるでしょうか?全身にあります。なぜ全身にあるでしょうか?細胞や組織を結びつけるのが結合組織であるからです。言い換えると、細胞や組織は結合組織の上にあると考えておいてください。

 皆さん、ついでにリンパ節が腫れるかの理由について知りたいと思いませんか?リンパ節が腫れる理由について、どんな医学書も簡単に「感染が起こっているからだ」とか「炎症が起こっているからだ」と済ませていますが、誰もその機序については説明しておりません。ここで私が説明してあげましょう。

 なぜ大食細胞がリンパ組織で増えると同時に、リンパ節が腫れるのでしょうか?みなさん、補体は「自然免疫の安物の抗体」と名付けた話を思い出してください。補体は病原体を大食細胞や好中球に食べさせるオプソニン作用があることも思い出してください。(補体については補体のコーナーを読んでください。)補体は、肝臓で作られ血中に大量に常に流れています。血中に入り込んだウイルスや細菌などの異物は補体と結びつき、血中からリンパ節や脾臓に運ばれていきます。病原体などの異物をひっつけた補体がリンパ節や脾臓に入り込むと、そこに常駐している大食細胞に捕まえられ、貪食されます。異物を貪食した大食細胞はその断片をリンパ組織に集まっているTリンパ球やBリンパ球に提示し、かつ刺激してこれらのリンパ球をどんどん増やしていきます。かつ様々なサイトカインを出させます。すると、サイトカインの一つであるTNF-αと大食細胞が結びついて、自分自身も増殖していきます。これも感染が起こった時にリンパ節が腫れる理由のひとつなのです。)

  昨年10月に38歳で亡くなった人気声優、松来未祐(まつき・みゆ、本名・松木美愛=みえこ)さんの両親が、娘の命を奪った「慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)」の周知と難病指定を願い、伏せていた病名の公表に踏み切った。EBウイルスは日本人の成人の9割以上が保有しているとされるが、発症はまれ。(そうです。水痘帯状ヘルペスは、日本人の成人の100%が感染しているといえます。単純1ヘルペスや単純2ヘルペスも、80%の人が感染しているといわれています。EBウイルスも90%以上の人が感染しているにもかかわらず、なぜEBウイルス感染症や、単純1ヘルペス感染症や単純2ヘルペス感染症という病気にならないのでしょうか?疑問に思いませんか?その疑問に答えましょう。

 まず最初に、人はEBVにいつどのように感染するのでしょうか?生まれてすぐに家族の大人の誰かがEBウイルスに感染していると、必ず飛沫感染、つまり唾液を通じて喉から、あるいは傷から接触感染により、通常は乳幼児から小児期に初感染が起こります。しかし、感染しても潜伏感染といって、エピソームという形で感染した細胞の核の中で二重鎖遺伝子を環状遺伝子に変えてこっそり潜んでいるので、免疫からは完全に隠れることができます。従って、感染はしているにもかかわらず、免疫がEBウイルスに気づかないので、戦うこともできないので、いわゆる不顕性感染で終わります。ここで詳しく、なぜ不顕性感染、つまり感染になって隠れ続けることができるかの説明をしましょう。

 ヘルペスウイルス以外のウイルスは、環状遺伝子になることができないからです。それでは環状遺伝子になることができない他の種類のウイルスは、どのようにして免疫によって殺されてしまうのでしょうか?

 全てのウイルスは細菌と違って、自分で独立して増殖することはできず、必ず動物細胞をはじめ細菌、真菌、植物等の生きた細胞に侵入し、感染細胞の代謝機能を借用して自己の複製を行わざるをえないのです。ウイルスが細胞に感染するとウイルス遺伝子によって発現されたタンパク抗原(これをウイルス関連抗原といいます)と、宿主細胞のMHCⅠ遺伝子と結びついて細胞表面に一緒に提示されます。この複合体が宿主のキラーT細胞によって認識され、種々の炎症反応が引き起こされることは、皆さん既にご存知でしょう。さらに樹状細胞や大食細胞に貪食されると、ウイルス遺伝子によって発現されたタンパク抗原(ウイルス関連抗原)と樹状細胞や大食細胞によって作られたMHCⅡタンパクと結びついて、この複合体をヘルパーT細胞に提示することもご存知でしょう。このような生体防御免疫機構が働くことによって、最後にウイルス感染細胞は排除され、ウイルスは中和され、異物抗原は除去されてしまうのであります。

 ところがヘルペスウイルスは感染細胞の核に中に潜伏感染してしまうと、二重鎖螺旋DNAではなくて環状になり、体を丸めこむようにしてしまうと、つまりエピソーム状態になってしまうと、いかなる宿主の免疫機構で認識されることができなくなるのです。MHCⅠやMHCⅡタンパクは、ヘルペスウイルスのタンパクであるウイルス関連抗原と結びつくことができないので、キラーT細胞やヘルパーT細胞に感染したことを知らせることができないのです。

 ついでに説明しておきますが、ヘルペスが潜伏感染であるときには、増殖ができないのはなぜだかも説明しておきましょう。頭のいい皆さんは既にお分かりだと思いますが、ヘルペスが増殖するためには、自分自身の遺伝子をコピーする必要があります。ところが環状構造では、遺伝子をコピーしようがないのです。必ず環状から螺旋の二重鎖DNAに戻さなければならないからです。どのようにして螺旋の二重鎖DNAが一重鎖になり、遺伝子をひとつずつコピーしていくのかの説明をすると、むちゃくちゃ長くなるので話はできませんが、とにかく環状構造、つまりエピソームの状態では遺伝子をコピーしようがないのです。

 それではエピソームから通常の二重鎖になるキッカケはなんでしょう?それは患者の免疫が落ちたときです。ところが免疫が落ちたということをどうして感染のヘルペスウイルスは知るのでしょうか?もちろんこの答えに対する答えは誰も知りません。いずれ私がその答えを出したいのですが、難しすぎます。ただ手がかりはあります。人体が作る唯一の免疫を落とす成分はなんでしょうか?ステロイドホルモンです。従ってステロイドホルモンが多くなったことをエピソームがどのようにして感知するかというのが手がかりであります。取っ掛かりは、ヘルペスが感染した細胞に大量のステロイドが取り込まれ、このステロイドが核の中にあるエピソームの遺伝子に侵入し、大量のステロイドが「ヘルペスを増殖せよ」という遺伝子と結びついて、感染を解除するのです。もうひとつの答えは、大量のステロイドがエピソームの遺伝子ではなくて、宿主の細胞の遺伝子に入り込んで、NF-κβという免疫の転写因子がOFFになってしまい、宿主の免疫細胞が作り出すヘルペスを殺すタンパクの発現が減り、それを察知したエピソームが増殖を始めるのです。もちろん上に述べた2つのメカニズムが同時に起こっている可能性が高いのです。

 ついでに説明したいことがあります。潜伏状態のヘルペスウイルスが、紫外線照射、感冒、月経、人為的な免疫抑制の後、ストレスの後の5つの状況によって溶解感染(増殖感染)に変わることが知られています。つまり増殖したヘルペスウイルスを5つの状況が免疫を上げるからです。なぜ免疫が上がるのでしょうか?まず紫外線照射は高エネルーで熱を持っているので免疫を上げます。2つ目の感冒にかかると、異物が侵入すると免疫が上がります。3つ目の月経は、月経時にはコルチコステロンに変わる黄体ホルモンが減少すると、ステロイドホルモンのひとつであるコルチコステロンが減るので、黄体ホルモンが減ってしまうということは、コルチコステロンが作れなくなるので、自然にステロイド離脱症状が生じ、その結果免疫が自然に上がってしまいます。4つ目の人為的な免疫抑制の後は、いうまでもなく免疫抑制が終わった後ではまさに人為的ステロイド離脱症状のために免疫が上がります。最後のストレスの後は、ストレスに耐えるために副腎皮質ホルモンが増加したぶん減ってしまうので、ステロイド離脱の結果、いわゆるリバウンドのために免疫が上がります。

 ここで注意しておきたいのは、実は増殖感染と溶解感染と再活性化の定義が明確にされていないことです。私がそれぞれの言葉の正しい定義をしておきましょう。まずヘルペスウイルスの感染の状態は、潜伏感染状態と増殖感染状態と溶解感染状態といわゆる医学者が使いたがる再活性化の状態の4つがあります。潜伏感染と増殖感染は、ヘルペスが増えるか増えないかについての定義です。一方、溶解感染は感染した細胞の死に方についての定義です。それでは医学者がよく使う「ヘルペスの再活性化」の定義はどうなるでしょうか?それは感染した細胞で増殖感染している間に、増えた後に利用し尽くした細胞を溶解感染させた後に、その細胞から飛びだして次の細胞に感染する途中に免疫に見つけられて炎症が生じている状態が再活性化であります。どんなヘルペスの専門書を読んでも、なんの定義もされずに「再活性化」という言葉が気楽に使われていうことを常に不思議に思っています。なぜ免疫学に定義しないのでしょうか?

 免疫が落ちると潜伏感染からヘルペスが増殖する感染(増殖感染)に変わります。免疫が落ち続けるとますますヘルペスは増殖を続けます。数百個~千個以上のヘルペスウイルスが増殖感染を起こしながら数を増やした後、役に立たなくなった感染した細胞を捨てます。この時に捨てられた細胞が生き続けることができずに、細胞が溶けるような死に方をするので溶解感染といわれるのです。いわゆる細胞のネクロースシス(壊死)という死に方ですね。増殖したヘルペスウイルスはさらに次々と新たなる細胞に感染していきます。従って増殖感染には2つの現象が含まれています。数を増やすことと、新しい細胞に感染していくという2つの現象です。

 それでは溶解とはなんでしょうか?細胞が膨張し、細胞膜が破壊して内容物が外に出て溶けるように細胞が死んでしまうことです。つまり細胞溶解感染による細胞死というのは、専門用語でネクローシス(necrosis)といい、日本語では壊死といいます。

 実はヘルペスに感染した細胞の死に方にはもう一つあります。それはヘルペスウイルスが感染した細胞で増殖している時に、MHCⅠタンパクと結びついたヘルペスウイルスのペプチドがキラーT細胞やナチュラルキラー細胞(NK細胞)によって認識され殺されることです。これはアポトーシスと呼ばれ、ときにプログラム細胞死(計画された細胞死)とも呼ばれます。アポトーシスは細胞質が自然に縮まり、さらに核も凝縮して小さく固まり、核の中のDNAも自然に分解し、細胞膜に包まれた残滓が最後に大食細胞によって処理されます。

 ちなみに直接ヘルペスウイルスとは関係ないのですが、もうひとつ有名な細胞死があります。去年のノーベル生理医学賞を日本人の大隈良典先生が受賞されました。彼の研究はオートファジー(Autophagy)を伴う細胞死にも関わる研究であります。オートファジーとは、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つであり、自食(じしょく)とも呼ばれます。酵母からヒトにいたるまでの真核生物に見られる機構であり、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質を合成したときのタンパクの処理や、栄養が悪化し、既に作られたタンパク質の再利用を行うときや、細胞質内に侵入した病原微生物を排除するときにオートファジーを行うメカニズムを大隈先生は証明したのです。オートファジーはこの他に、個体発生の程でのプログラム細胞死や、ハンチントン病などの疾病の発生、細胞のがん化抑制にも関与することがわかっています。

 最初に書き始めたように、EBVは生まれてすぐに家族の大人の誰かがEBウイルスに感染しているので、遅かれ早かれ必ず飛沫感染、つまり唾液を通じて喉から、あるいは傷から接触感染により、通常は乳幼児から小児期に初感染が起こります。しかし感染しても、エピソームという形で感染した細胞の核の中で二重鎖遺伝子を円環状の遺伝子に変えてこっそり遺伝子を隠しているので、免疫からは完全に逃れることができます。これを潜伏感染といい、感染はしているにもかかわらず、免疫がEBウイルスに気づかないので、戦うこともできないので、いわゆる不顕性感染で終わるだけです。さらに乳幼児期に感染しても、母親から胎児の時に胎盤を通じてもらったEBウイルスに対するIgG抗体が生後6ヶ月ぐらいまでは残っている上に、母乳を通じてEBウイルスに対するIgA抗体を常に赤ちゃんは与えられるので、EBウイルスはますます感染から顕性感染に変わることができないのです。顕性感染とはヘルペスが人体に感染したことを免疫に知られて、免疫とヘルペスとの戦いが始まることです。

 ところがときに、伝染性単核症という顕性感染になることがあります。英語で“Infectious mononucleosis”と書き、略してIMと書きます。IMについては次回詳しく書きますから大いにご期待下さい。結論から言うと、IMになる人は感染の際に免疫が落ちていたからなのです。

 長い間ご期待に沿えなかったのですが、伝染性単核症(IM)について詳しく書きます。

 まず伝染性単核症(IM)は、思春期から若年青年層に好発し、大部分がEpstein‐Barrウイルス(EBV)の初感染によって起こります。ほとんどがEBVの初感染によりますが、一部サイトメガロウイルス(CMV)、HHV6、アデノウイルス(ADV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、トキソプラズマ、リケッチアによる報告もあります。復習しますと、EBVはヒトヘルペスウイルス科γ亜科に属する約172kbpの2本鎖DNAウイルスで、直径は約150~220nmであります。

 ここで、172kbpについて説明しておきましょう。kbpの“k”はキロであり1000という意味ですね。“b”は“basic”であり「塩基の」という意味で、“p”は“pairs”で「対」という意味です。ですから172kbは、172×1000=17万2000個の塩基の対からできている二本鎖DNAウイルスです。一本鎖のDNAに17万2000個の塩基がのっており、これが対になっているということです。ついでに150〜220nmの意味も説明しておきましょう。“n”は10億分の1であり、“m”はメートルです。従って、150nmは、EBVの直径は150×10億分の1メートルの長さであるということです。想像できますか?まさに遺伝子は極微の世界ですね。

 EBVの主な感染経路は、EBVを含む唾液を介した感染でありますが、一部、輸血による感染も報告されています。乳幼児期に初感染をうけた場合は不顕性感染であることが多いのですが、キスによって思春期以降に感染した場合にIMを発症することが多いので“kissing disease”(キス病)とも呼ばれています。EBVの既感染者の約15~20%は唾液中にEBウイルスを排泄しており、感染源となるのです。

 1964年、EpsteinとBarrによってアフリカのBurkittリンパ腫患者から新しいヘルペスウイルスが発見され、Epstein Barr virus(EBV)と命名されました。IMとEBVとの関係が報告されたのは、1968年のHenleらによるものが最初です。

 日本人でのEBV抗体保有率に関しては、12~23カ月齢児において54.5%~55.8%であり、年齢別抗体保有率は、日本では2~3歳までに70%位が感染を受け、20歳代で90%以上が抗体を保有しています。日本においては、IMは思春期が好発年齢でありますが、乳幼児期のEBVの初感染においてもIMが認められる場合があります。

 ちなみに、サイトメガロウイルス(CMV)の妊娠可能年齢における抗体保有率は90%以上ありましたが、最近70%台に下がってきています。

 それではどのようにEBVは人体に感染していくのでしょうか?EBVはまず咽頭上皮細胞に感染し、そこで増えたウイルスが、主にEBVの標的細胞であるBリンパ球以外に、一部はTリンパ球やNK細胞に感染します。その機序は、EBVのenvelope蛋白であるgp350/220と細胞の補体レセプターCD21との結合で細胞に吸着します。“gp”の意味は、“glycol protein”という糖タンパク質であり、別名“muco protein”ともいわれ、粘液素の主成分です。従ってgpは、粘液の主成分ですから、しかも全ての細胞にあるのでEBVはいろんな細胞に感染しやすいと考えられます。プロテオグリカン以外の糖タンパク質であり、全ての細胞に含まれているのがグリコプロテインであります。糖タンパクというのは、言うまでもなく糖とタンパク質が結合したものです。一方、プロテオグリカンというのは、タンパク質を結合した多糖の総称で、多糖類が主体の分子群です。

 補体レセプターであるCD21は主にBリンパ球に発現していますが、Tリンパ球、NK細胞、咽頭上皮を含む上皮細胞にも発現しており、EBV感染のターゲットとなりえるのです。咽頭上皮にもCD21があるので、唾液にEBVを持っている人が持っていない人とキスすると、咽頭上皮のCD21にひっついてEBVはキスをした相手に初感染させてしまうのです。その後ウイルスは“endocytosis”により細胞内に取り込まれ、ウイルスDNAはウイルス粒子の中では線状で存在し、潜伏感染状態では環状に変化し、核内で維持されます。しかし、この状態ではEBウイルスは産生されず、EBウイルスの一部の遺伝子であるEBNA-1、-2、-3a、-3b、-3c、-LP、LMP-1、-2a、-2b、BARF0、EBER-1、-2のみが発現している潜伏感染状態に入るのです。免疫が落ちた時に再活性化が起こると、まず前早期抗原であるimmediate early antigen(IEA)、BZLF1、BRLF 1の3つのタンパク抗原が作られ、その後、早期抗原であるearly antigen(EA)や酵素類が作られ、次に後期抗原であるlate antigen(LA)、capsid蛋白、envelope蛋白が作られて、最後にやっとウイルス粒子の産生が始まるのです。EBVがlytic cycle(増殖サイクル)に入ると、viral IL-10(vIL-10)が産生されます。“viral”というのは「ウイルスによって作られた」という意味です。

 本来、IL-10はアレルギーの時にTh2から作られるべきサイトカインであり、と同時にウイルスを殺すTh1が増えないようにするのですが、EBVがlytic cycle(増殖サイクル)に入ったときに、IL-10と働きが全く同じviral IL-10(vIL-10)を作ってしまい、EBVを殺すことができなくなってしまうのです。つまり、このviral IL-10(vIL-10)がTh1細胞の機能を抑制し、かつTh1リンパ球の増殖を抑え、さらにウイルスを殺すために利用されるサイトカインであるIFN-γやIL-2の産生も抑制してしまうのです。念のために付け加えると、元来、Th1細胞の機能はまさにEBVを殺すために存在しているのに、Th1の増殖を抑えてしまうので、ますますEBVを殺すことができなくなってしまうのです。その結果、EBV感染Bリンパ球だけがどんどん増殖してしまうのであります。これが増殖感染の実態であります。EBウイルスはなんと狡猾な天才侵入者だと思いませんか?だからこそ免疫を抑えてはいけないのです。

 ついでに“endocytosis”について説明しておきましょう。“endocytosis”とは、表面の細胞膜から外部の物質、この場合はEBVを取り込むことであります。“endocytosis”には2つの様式があります。食作用(phagocytosis)と、もうひとつは飲作用(pinocytosis)であります。まず“phagocytosis”は、マクロファージのような貪食専門の細胞が微生物などの大きなものを取り込むのです。“pinocytosis”は、仮足(pseudo-pod)を使って取り込むのです。)

 医師の間でもあまり知られておらず、松来さんは通院を繰り返しても感染判明まで1年以上かかった。公表は松来さんの志でもあった。(著名な人が亡くなられるときに、死亡者略歴が新聞に掲載されます。医者として常に気になるのは、死亡時の年齢と死因であります。特にどのような病気で亡くなられたのかが最も知りたいのです。年齢は必ず書かれていますが、ときどき死因が書かれていないときがあります。松来さんが亡くなられたときも、死亡者略歴は新聞に載せられたはずです。様々な理由で病名を公表されたくない家族の方がおられるのも当然でしょう。そのような思いを超えて、難病だからこそ改めて松来さんの家族が死因を公表されることを望まれたのでしょう。つまり、難病をなんとか治してもらいたいという思いで病名を公表されたのでしょう。この世には公表されて困るような死因は何もないのですから、著名な人物がどうして亡くなられたのか、私たち医者たちにとって病名が最も関心があるところですから、いかなる場合でも必ず死因は掲載していただきたいと常に思っています。)

 広島県内に住む父の松木孝之さん(69)と母智さん(68)によると、松来さんが最初に体調不良を訴えたのは2013年ごろ。夜中になると39度台の高熱に苦しんだ。(本来、EBウイルスは、人口の90%以上の人に感染しているので、ほとんどすべての人がEBウイルス感染症といってもよいのにもかかわらず、なぜEBウイルス感染症にほとんどの人がかかっていると言わないのでしょうか?それは、EBウイルスは人の細胞に入り込むと、潜伏感染という状態になり、免疫に見つけられないので、EBウイルスと免疫の戦いが一切症状として現れないからです。

 EBウイルスが一番感染する細胞はBリンパ球であります。なぜでしょうか?Bリンパ球はもともと補体と結びつくCD21Rというレセプターを持っており、このレセプターにEBウイルスが好んで結合し、Bリンパ球に感染してしまうのです。その他にT細胞やNK細胞や、他の血球である血小板や赤血球などにも侵入することができるのです。さらにほとんどの粘膜細胞や他の粘液を分泌する細胞に感染したがります。このような細胞に感染しても、免疫が正常であればEBウイルスは増殖しても必ずキラーT細胞に見つけられ、細胞もろとも殺されてしまうので、おとなしく潜伏感染の状態で潜んでいるだけなのです。それでは、松来さんはなぜ夜中になると39度台になり始めたのでしょうか?彼女の免疫が下がり始めたからです。私は彼女の生活ぶりが、どれほどストレスがあったかどうか知る由もありませんが、絶対言えることは免疫が下がらない限りはEBウイルス感染も一生潜伏感染で終わってしまうということです。

 それでは免疫が落ちているかどうかを見るのは、何を調べればいいのでしょうか?採血をして末梢血のリンパ球の白血球に占める割合を見ればすぐに分かります。リンパ球は、本来正常な免疫の人では40%以上なければなりません。ところがストレスがかかりすぎて鬱にならないためにストレスホルモンを出し続けたり、さらにアレルギーや他の病気で長期にわたり解熱剤や痛み止めやステロイドを始めとする免疫抑制剤を飲み続けると、どんどんリンパ球が減っていきます。とりわけほとんど全ての臓器移植をされた患者さんは、CAEBV感染症にかかる危険と背中あわせであります。リンパ球は骨髄のリンパ球の幹細胞から作られます。骨髄の細胞の10万個に1個あるといわれるリンパ球の幹細胞が、ステロイドホルモンを出し過ぎたり、使いすぎたりするとどんどん減っていきます。というのは、リンパ球の幹細胞はステロイドに対して極めて脆弱であるからです。

 私が今まで見た末梢血のリンパ球が最悪の人は3%でした。10%台の人はざらにいます。ストレスが多い時代ですから、頑張りすぎる人が多くなり、自分のストレスホルモンであるステロイドホルモンを出しすぎて、リンパ球が20%台になっている人が極めて多くなりました。40%台の人などは幸せな子供や、ストレスが極めて少ない幸せな大人以外ではほとんど見られません。世界第3位の豊かな資本主義国家である日本が、実はストレスがない心の豊かさ、つまり本当の幸せは子供にしかないということがお分かりになるでしょう。ところが近頃は子供のリンパ球も減ってくるようになりました。供たちにとって最もストレスがかかる受験戦争の年頃に突入し、頑張りすぎる供のリンパ球は20%台に下がっていくのです。さらにアレルーでステロイを使っている供も、ほとんどが20%台から30%台の前半までリンパ球の数が下がっていくのです。

 私も自分のストレスの度合いを確認するために、自分のリンパ球を適当にフォローしているのですが、通常は40%台でありますが、私の仕事も難病者が多いので、思いがけないストレスがかかった時のリンパ球は確実に下がり、その時は20%台の後半になってしまいます。ところがストレスがなくなると30%台後半から40%に戻っていくのです。私の場合は自分のストレスホルモンで一時的に骨髄のリンパ球の幹細胞の働きを抑制しても、ストレスがなくなれば確実に戻るのですが、ステロイドを長期に医者に使われてきた者のリンパ球は、骨髄のリンパ球の幹細胞が殺されているので、ほとんどが20%前後以上には上昇しないのです。残念ですが。このような人たちは非常に風邪をひきやすくなります。しかも治りにくくなります。

 ストレスホルモンであるステロイドホルモンが大量に体内に存続し続けると、まず抗原提示細胞(APC)の代表である樹状細胞の働きが確実に減少します。次に影響を受けやすいのは、キラーT細胞(CD8+T細胞)やヘルパーT細胞であります。細胞に侵入したEBウイルスを殺すのは、キラーT細胞しかありません。さらにヘルパーT細胞はEBウイルスに対する特異的な抗体を作る力も弱まっていきます。このキラーT細胞やヘルパーT細胞の働きが無くなっていくのを感知した、主にBリンパ球に潜伏感染をしているEBウイルスは、自分自身を増殖する態勢に入ります。これが既に述べたような溶解感染というになります。英語で、“Lytic infection”という状態になり、潜伏感染では数種類の遺伝子しか発現させていないのに、溶解感染では80種類もの遺伝子の全てを発現させ、自分の子孫であるウイルス粒子(ビリオン)を増やしていきます。溶解感染がどのようにして出来上がるかについはあとで詳しく述べます。とにかくこれらのEBウイルスの遺伝子は全てタンパクになるので、このタンパクを数多く発現させればさせるほど、樹状細胞やキラーT細胞などに認識されて攻撃され、殺される危険を冒してまでも、自分を増殖させるために免疫との戦いを始める再活性化のきっかけを作るのです。

 ここでまずどうして松来さんが高熱が出たのかを知る前に、発熱のメカニズムについて少し復習しておきましょう。発熱を起こす物質を発熱物質と呼びます。体外から由来するウイルス、細菌、真菌などの微生物自身や菌体成分、キャリアタンパクと結びついたハプテンである化学物質などを外因性発熱物質といいます。このような外因性発熱物質によって様々なサイトカインが作られ、発熱を生み出すものを内因性発熱物質と呼びます。まず外因性発熱物質が生体に侵入すると、大食細胞に食べられ、TNF-αという発熱活性を有する内因性発熱物質が放出されます。さらに大食細胞で作られたTNF-αはNK細胞に働いて内因性発熱物質であるIFN-γを作らせます。さらに内因性発熱物質としては、インターロイキン1(IL-1)とインターロイキン6(IL-6)というサイトカインもあります。まずIL-1は未熟な樹状細胞である単球をはじめ、成熟した樹状細胞や好中球、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、血管内皮細胞など様々な細胞によって産生されます。次にIL-6はTリンパ球やBリンパ球、線維芽細胞、単球、血管内皮細胞、腎臓のメサンギウム細胞などの様々な細胞により産生されます。マクロファージは細胞表面のToll様受容体(Toll like receptor=TLR)を介して細菌の膜にあるエンドトキシンといわれるリポポリサッカライド(LPS)の刺激を受けることによりIL-6をはじめとした様々なサイトカインを分泌します。

 これらの内因性発熱物質であるサイトカインであるTNF-α、IFN-γ、IL-1、IL-6は、血流によって脳に運ばれ、血液・脳関門(BBB)がもともと欠落している脳室周囲器官の細胞に作用してプロスタグランジン(PG)E2を産生させます。産生されたPGE2は脳組織の中へ拡散し、視床下部にある視索前野のPGE2受容体を活性化しサイクリックAMPを遊離します。サイクリックAMPは神経伝達物質として体温調節中枢である視床下部にシグナルを伝え、体温のセットポイントを上昇させます。

 また内因性発熱物質以外に、直接外から来た外因性の微生物由来物質に対しても熱が上昇することがあります。これらも外因性発熱物質といいます。外因性発熱物質に対する受容体も視床下部の血管内皮細胞に存在し、これらの内皮細胞もPGE2産生を生じ、視床下部に発熱を起こさせます。つまり体温調節中枢である視床下部が刺激されると、交感神経系が活性化され、脂肪織における代謝性熱産生が上昇し、皮膚内を走る血管の平滑筋が収縮することで、体表面の血流が減少し、体表面からの熱放散が抑制され、発熱します。一方、発熱シグナルによる運動神経の活性化は、骨格筋におけるふるえ、熱産生につながります。このようにして熱産生促進と体表面からの熱放散抑制の2つの作用によって体の深部温度が上昇します。体深部温を上昇させる生理学的意義としては、体内に侵入した細菌類の増殖至適温度域よりも体温を上げ、細菌の増殖を抑える作用と、温度上昇による免疫系の活性化を促す作用の2つがあります。むやみに解熱薬を使用することは、生体の感染防御機能を弱めることにつながることを知っておいてください。熱がなくなったら気持ちは良いものですが。解熱鎮痛薬の多くは、プロスタグランジン合成酵素群のなかのシクロオキシナーゼと呼ばれる酵素の働きを阻害することで、プロスタグランジンE2(PGE2)の合成を抑制して発熱を抑えます。

 それではどのようにしてEBウイルスは潜伏感染から溶解感染(増殖溶解感染)に変わるのでしょうか?増殖溶解感染はウイルス産生増殖感染ともいわれます。別名、皆さんよく聞かれる言葉ですが、再活性化ともいわれます。しかしながら、再活性化のメカニズムはどの専門書にも書いていないので、これからの話は再活性化の意味も詳しく説明することになります。まずなぜ再活性化をするのでしょうか?またできるのでしょうか?まずはじめに、EBウイルスの感染がどのようなものであるかを説明した後、再活性化、つまり溶解感染の説明をしましょう。

 潜伏感染においては、本来EBウイルスは二重鎖DNAの遺伝子を持っていますが、Bリンパ球に感染すると、Bリンパ球の核内に入り込んで、環状の二本鎖DNAに変わります。Bリンパ球の染色体に組み込まれることはない環状の二本鎖DNAでありますから、これをプラスミド状態といいます。このように哺乳動物細胞内で核内にプラスミド状態で維持される分子、ここではDNA分子でありますが、このようなプラスミド状態にある分子を一般にエピゾームとかエピソームともいいます。さらにEBウイルスはいつまでも生き続けるために、自分が住んでいるBリンパ球が永遠に生き続けるようにBリンパ球を不死化できるのです。不死化のメカニズムははっきり分かっておりません。EBウイルスは、Bリンパ球の染色体末端にある長寿遺伝子といわれるテロメアを短くさせないテロメラーゼという酵素をBリンパ球に作らせるからでしょう。

 さらにこの潜伏感染も発現された数少ない遺伝子の発現のパターンによって4つの形があります。例えばEBウイルスゲノムはメチル化の度合い、ヌクレオソーム形成の度合い、ヒストン修飾の度合い、転写エンハンサーの働きの度合いなどによってⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型、0型の4つがあります。これらの専門用語は全て遺伝子学のエピジェネティックな働きに関係することであります。つまり遺伝子は存在しているのでありますが、それを発現するかどうかを決める働きをエピジェネティックな働きというのですが、皆さんにとっては極めて難しい言葉でしょうが、ついてきてください。エピジェネティックについてはこちらを読んでください。

 二次リンパ組織でEBウイルスが潜伏感染しているBリンパ球では、今言った4つのタイプの潜伏感染が生じているのです。これらの4つのタイプは、個々のBリンパ球の遺伝子に対して、それぞれ異なったエピジェネティックな働きの結果、EBウイルスの遺伝子によって作られたタンパクが、様々な異なった表現系のパターンで発現しているのです。もっと詳しく書きたいのですが、これ以上詳しく書きすぎると永遠に続きそうですから書きません。しかもまだまだEBウイルスは謎に満ちたウイルスですから、全て分かっているわけでもありません。チャンスがあれば書くつもりですが。

 とにかく感染しているEBウイルスは、80種類の遺伝子の中のごく限られた遺伝子のみを発現していることを知っておいてください。ただ感染した宿主細胞の細胞周期に合わせて自分自身も複製することで、自分自身の遺伝子だけを維持し続けているだけで、自分の子孫を増やしているわけではないのです。

 ところが免疫が極端に下がった時に、例えば臓器移植に際して大量のステロイドをはじめとする免疫抑制剤を用いると、「さぁ、チャンス到来?」と言わんばかりにEBウイルスは密かな潜伏感染から増殖感染(増殖溶解感染)、つまり再活性化に向けて様々な遺伝子を発現させようとするのです。それでは、EBウイルスが感染し、様々な症状が出た時にステロイドを使えば、どのようにしてEBウイルスは増殖するチャンスと認識できるのでしょうか?ステロイドの作用を知っておけば、答えは実は極めて簡単なのですが理解するのは難しいのです。答えは簡単に言えば、炎症を起こさせる中心的な役割を持っているのは、NF-κBという転写因子であることをまず頭に入れてください。このNF-κBという遺伝子の転写因子は、EBウイルスを殺すための遺伝子を発現させるための転写因子であることも知っておいてください。さらにステロイドはこのNF-κBの働きをOFFにしてしまうのです。さらに詳しく説明しましょう。

 

 さて、EBウイルスが感染すると、免疫はすぐに戦いを始めます。その結果、EBウイルスを殺すための炎症反応が起こり、大食細胞や樹状細胞やTリンパ球やBリンパ球は、種々のサイトカインを産生し、血流を通じて体中の細胞に伝えます。このサイトカインと結びつくと、敵が来たと伝えるシグナルが細胞に発せられます。すると、これらのサイトカインシグナルは、免疫細胞中の細胞質に存在するIκB/NF-κB複合体のIκB(inhibitor of NF-κB)をリン酸化し、リン酸化したIκBはNF-κBから離れてしまいます。IκBは“inhibitor of NF-κB”の略であり、“inhibitor”は「阻害」という意味です。なぜNF-κBにIκBがひっついているのでしょうか?いうまでもなく、炎症がないときはNF-κBの働きを発揮させないためです。IκBから離れたNF-κBはすぐに核内に移動します。NF-κBは炎症を起こす遺伝子の転写因子であります。つまり炎症を起こす遺伝子をONにするのです。核内に移動したNF-κBは、多くの炎症関連遺伝子の転写を促進することにより、炎症を起こすタンパクをどんどん作ります。

 ところが、炎症を抑えるためにステロイドが投与されると、ステロイドはグルココルチコイド受容体(GR)と結合し、このステロイドと結合したグルココルチコイド受容体(GR)はただちに核内に移行し、核内にあるNF-κBに直接結合することによって、NF-κBの転写を阻害するのです。このようにステロイド薬は炎症反応の中核的役割を担っている転写因子のNF-κBを直接抑えることにより、幅広くかつ強力に炎症を抑えてしまうのです。しかし残念なことに、ステロイドと結合したグルココルチコイド受容体(GR)は同時にアトランダムに炎症を起こす遺伝子以外の様々なONになった遺伝子と結びついて、必要な遺伝子の働きを抑制してしまうのです。これが様々なステロイドの副作用であります。

 ちなみにグルココルチコイド受容体(GR)に結びついてNF-κB阻害活性だけが発揮される、副作用の少ない新たなるステロイドと同じような抗炎症作用だけを持つ薬の合成は、ステロイド薬が使われ始めてから60年以上も試みられてきましたが、未だに成功していないのです。

2018/5/12

 そもそもバーキットリンパ腫とは何でしょうか?

 

 まず、バーキットの名前が付けられたのは、1958年にアフリカで小児に初めて見つけたのがバーキットという人だったからです。バーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma:BL)は、骨髄でBリンパ球の前駆細胞に感染したEBウイルスが、その前駆細胞のBリンパ球の遺伝子を転換させてしまったものです。これをトランスフォーメーションというのはご存知でしょう。骨髄のBリンパ球の前駆細胞の遺伝子をどのように変えてしまったのでしょうか?それはEBウイルスがBリンパ球の染色体にある2つの遺伝子を交換させてしまったのです。ところが残念ながら、この遺伝子の交換(転座)がどのように起こるかについては誰も解明していません。

 

 その2つの遺伝子のうちの1つは、c-myc遺伝子であります。c-myc遺伝子というのは、実はc-mycという転写因子を作る遺伝子であります。mycという転写因子は、ノーベル賞を受賞された山中教授が、iPSを作るときに線維芽細胞に入れた4つの転写因子のうちの1つであります。mycというのは、“Myelo cytomatosis”の略であり、「骨髄細胞腫症」の意味です。“Myelo”が「骨髄」という意味であり、“cytomatosis”が「細胞腫症」という意味であります。もう1つは、言うまでもなく、Bリンパ球が作る免疫グロブリン遺伝子であり、この免疫グロブリン遺伝子とc-myc遺伝子が入れ替わったのです。

 

 このように、バーキットリンパ腫は、染色体にある2つの遺伝子を相互に入れ替えること(転座)によって生じた悪性度の高いB細胞性腫瘍であります。EBウイルスが骨髄のBリンパ球の前駆細胞のどの段階で2つの遺伝子を相互転換させる時期によってBリンパ球の形態が変わるので、悪性リンパ腫の形態学的な分類は非常に異なってしまうのです。実際に今まで血液学者によって何十年もの間、悪性リンパ腫の分類がなされてきましたが、絶対に正しい分類というのはないので、その分類については下の表に掲載しておきます。

 

 現在の悪性リンパ腫の分類は、がん細胞の形態や性質によって70種類以上ありますが、大きくはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分類されています。発症頻度は欧米と異なり、日本ではホジキンリンパ腫は少なく、多くは非ホジキンリンパ腫です。以下に悪性リンパ腫の現代用いられている分類法を表にしておきましょう。非ホジキンリンパ腫の中に前駆リンパ系由来と、成熟B細胞由来と、成熟T/NK細胞由来の3つがあることがわかりますね。ひとつめの前駆リンパ系由来のものは、まさに骨髄でヘルペスウイルスに感染したものであり、あとの2つの成熟B細胞由来と成熟T/NK由来のがん細胞は、先ほど述べたようなEBウイルスが骨髄で前駆リンパ球(Bリンパ球やTリンパ球やNK細胞)がアポトーシスしないで、なんとか成熟して末梢血中に出たものだと私は考えています。世界で初めての考え方かもしれませんが、いずれにしろ、全ての悪性リンパ腫は8つのヘルペスウイルスが感染したそれぞれの細胞の遺伝子や染色体をトランスフォーメーションさせたためだと考えています。

 さて、治療法に関してあえて言及すれば、現在用いられている全ての治療法は、全てがステロイドや抗がん剤や遺伝子を変性させる生物製剤などであります。従って詳しく治療法について詳しく書くのも無駄だと考えますのでやめます。

 

 ここで、以前コメントし始めた愛知県がんセンター研究所腫瘍ウイルス学部の村田貴之先生の優れた「EBウイルスの感染様式とがん」の論文のうち、バーキットリンパ腫について書かれている部分についてコメントを次回からしていこうと思います。

 

 もうひとつ忘れないうちに書いておきたいのですが、あらゆる白血病も悪性リンパ腫と同じく8つのヘルペスウイルスのどれかによって引き起こされた後天的な遺伝子病と考えています。いずれ詳しく白血病について述べるつもりです。

 今日はまず予告した通りに、バーキットリンパ腫について詳しく述べながら同時に悪性リンパ腫の本質についても解明していきましょう。まずバーキットリンパ腫から始めます。  

 バーキットリンパ腫は、ヒトで最初に発見されたEBウイルスによるがんであります。アフリカでの発症が多く、胚中心B細胞由来で、IgとMycの転座を特徴とします。  まず胚中心とは何かについて復習しておきましょう。リンパ節はリンパ小節が集合したものです。リンパ小節はときにリンパ濾胞ともいいます。リンパ小節の中心部にできる球状の構造が胚中心であります。胚中心は英語で“germinal center”といいます。そこでBリンパ球から、活発に抗体が作られています。リンパ小節は、リンパ節のみならず様々なリンパ系の器官である脾臓、扁桃、虫垂、パイエル板などに無数にあります。Bリンパ球(B細胞)がびっしりと集まった塊で、リンパ小節で抗体の産生が盛んになるときだけ、その中心部に増殖分裂しつつある大型のBリンパ球やTリンパ球が集まるエリアができ、これが胚中心であります。その周囲は新たに生まれた小さなリンパ球が詰まっているので、顕微鏡でみると胚中心が明るく、周囲が暗く見えます。  ここで1次リンパ小節と2次リンパ小節について復習しておきましょう。1次リンパ小節と2次リンパ小節の定義が2種類あるので、もう一度復習しておきます。まず、一つの定義は、リンパ小節内で、胚中心以外の常に存在する部分を1次リンパ小節(1次小節)とか、1次リンパ濾胞(1次濾胞)と呼びます。働きが活発なときだけ現れる胚中心のことを、2次(リンパ)小節、2次(リンパ)濾胞と呼ぶことがあります。2つめの定義は、胚中心のない不活性なリンパ小節のことを1次(リンパ)小節、1次(リンパ)濾胞、胚中心のできたリンパ小節のことを2次(リンパ)小節、2次(リンパ)濾胞とよぶことがあります。  さらに2次リンパ小節(2次小節)または2次リンパ濾胞(2次濾胞)という用語を胚中心の意味で使うことがありますが、これは混乱の元なのでやめたほうが良いと考えています。以上の話は以前ホームページに述べた話ですが、専門的な話なので、自分自身のために復習したまでです。  

 さて、本論の続きに戻りましょう。EBウイルスが陰性であっても、Ig-Mycの転座は低い確率で起こりうる現象であり、EBVが感染することでその確率が高まっています。Myc転座の他に、TP53やRB2の変異が見られます。Ig-Mycの転座という意味は、あるひとつの染色体の上に乗っている免疫グロブリンの遺伝子と、別のひとつの染色体に乗っているMycという癌原遺伝子どうしが相互に入れ替わっている、つまり相互転座していることです。  

 ここでMycとかTP53やRB2について詳しく述べましょう。まずMycについては既に述べましたが、もう少し詳しく説明しましょう。Mycは転写調節因子(転写因子)として機能する癌遺伝子タンパクとしてバーキットリンパ腫に初めて同定されました。なぜMycは癌化を促進する能力があるのでしょうか?本来はMycの遺伝子も変異しなければ正常な遺伝子であり、細胞を増殖するのに絶対に必要な遺伝子であったのですが、どうしてMyc遺伝子が原癌遺伝子になってしまうのかについての考察を進めているのです。その考察の結論は既に分かっているので、忘れないうちに答えを書いておきます。以前から言っているように、EBウイルスによる遺伝子の様々なトランスフォーメーションであるのです。今までトランスフォーメーションという言葉は漠然と使ってきました。そのトランスフォーメーションの本体をこれから明らかにしていきたいのです。言い換えると、どのようにしてEBウイルスはトランスフォーメーションを細胞に生じさせ、Bリンパ球の細胞の遺伝子を変えるのでしょうか?  私は長い間、ヘルペスウイルスは感染している細胞の遺伝子に自分の遺伝子をアトランダムに入れ込んで、細胞の遺伝子を変異すると考えていました。ところがどれほど勉強しても、どのようにして自分の遺伝子を感染した細胞の遺伝子に入れ込むかということについては、答えは見出せませんでした。ときにはヘルペスウイルスは、細胞の遺伝子を切り取る制限酵素、つまり細胞を切り取るハサミを持って切り取り、そこに自分の癌遺伝子を侵入させて変異させるのではないかと考えたこともあります。しかしそもそもヘルペスウイルスは制限酵素を持っているはずがないのです。ではどうしてトランスフォーメーションが起こるのでしょうか?やっとその答えが分かりかけました。  トランスフォーメーションはどのようにして起こり、その結果どのようにして癌が起こるのかを考えていけば、なぜEBウイルスはBリンパ球を癌化させるのかの答えが出るのです。  まず癌とは何かについて考えていきます。みなさんご存知のように、癌というのは、元来癌というのは長い時間をかけて生じる老人の病であります。ところが悪性リンパ腫や白血病などの血液癌は、時間がかからずほとんどが急性に起こるものです。しかも固形癌と違って、若い人に起こり老人には滅多に起こりません。つまり血液癌は極めて短時間で生じますが、老人に見られる癌は長い時間をかけられ徐々に徐々に段階的に生じていくものであることをまず十分に理解してください。  本来、癌というのは極めて簡単に言うと、細胞の増殖を抑える遺伝子が異常になり、無限に増えることが第一条件です。つまり自動車で例えれば、長い時間アクセルが踏み続けられている状態が必要です。このような細胞を無限に増殖させる遺伝子を原癌遺伝子といいます。一方、このように無限にアクセルがかけられて増殖することを抑えることができる遺伝子があることもご存知でしょう。この過剰な細胞の増殖(アクセル)にブレーキをかける遺伝子が癌抑制遺伝子といいます。この癌抑制遺伝子も異常になると、ブレーキの機能が失われ、いつまでも細胞が増殖して癌細胞になってしまいます。この2つのアクセルとブレーキの遺伝子が同時に異常になると癌が起こります。  従って、癌の原因を探るということは、何がアクセルを踏み続けさせるのか、と同時に何がブレーキをかけなくさせるのかの答えを見つけ出せばいいのです。しかも悪性リンパ腫や白血病は、固形癌と違って極めて短時間に癌になってしまうというところに、この答えのヒントがあるのです。このヒントに誰も気づいていないのです。  EBウイルスが感染したリンパ球が極めて短時間に原癌遺伝子と癌抑制遺伝子を変えてしまうのはなんでしょうか?ステロイドホルモンで免疫を抑えることにより、Bリンパ球に増殖したEBウイルスが無限大に増えて、その中に白血病や悪性リンパ腫などの血液癌を生じさせるのですが、そのメカニズムは何でしょうか? そのひとつがEBウイルスにはLMP1やLMP2Aなどの癌遺伝子が含まれており、その遺伝子が発現するからであります。このLMP1やLMP2Aなどの癌遺伝子は形質転換を起こすCD40や、BCR(B cell receptor)と同じ機能を持っていて、Tリンパ球の膜の表面にはCD40Lという共刺激タンパクが出現しており、簡単に出会うことになります。するとBリンパ球が刺激されてますます増殖し、まるで癌細胞のように増え続けてしまうのです。 2つめは、リンパ球が増殖するときに、減数分裂する必要があります。1回目の減数分裂をするときに相同染色体が対合し、このときに遺伝子の交差が生じます。ところが、EBウイルスが感染しているBリンパ球は、免疫グロブリンの遺伝子と転写因子であるMyc遺伝子の相互転座が起こってしまうのです。もちろん他の様々な相互転座も生じやすくなるのです。減数分裂に見られる相同染色体の乗り換えについては後で詳しく説明します。 最後の3つ目は、EBウイルスが増殖し続けるのは免疫系をステロイドなどで抑え続けて、EBウイルスが感染したBリンパ球が増えるのみならず、CTL(キラーT細胞)等による白血球の癌細胞を殺す力が激減してしまうことで、ますます白血球の癌の数が増えていくというわけです。 以上の3つが次回詳しく説明していく内容であります。

乞うご期待!2018/06/14

 

 ハーキットリンパ腫は、ヒトで最初に発見されたウイルス陽性がんである。アフリカでの発症が多く、胚中心B細胞由来で、IgとMycの転座を特徴とする。ウイルス陰性であってもIg-Mycの転座は低い確率で起こりうる現象であり、EBVが感染することでその確率が高まっている(もしくは排除されにくくなっている)と考えられる。Myc転座の他に、TP53やRB2の変異が報告されている。アフリカでのエンデミックバーキットにおいてはほぼ100%でEBV陽性となっており、生体でのがんの維持進展にはウイルスの存在が重要であると考えられるが、一方で有名なAkata細胞のほか、多くのバーキット由来細胞からEBV陰性株が単離、維持できていることから、バーキットリンパ腫の腫瘍性増殖におけるウイルスの貢献は、少なくとも培養細胞レベルでは決して高くない。ウイルスはI型潜伏感染をとっていることが多く、発現しているEBV遺伝子数は限定的である。一部はWp-restrictedという、EBNA2の欠損を伴う複雑な様式をとる。免疫抑制関連リンパ腫などでもバーキットタイプの転座が見受けられることから、宿主の免疫状態も発症の原因のひとつであろう。ホジキンリンパ腫の大きな特徴として、EBV陽性で腫瘍性に増殖するHodgkinandReed-Sternberg(HRS)細胞と、その周囲にEBV陰性の非腫瘍性リンパ球が高度に浸潤していることが挙げられる。HRS細胞も胚中心由来で、本来であればアポトーシスによる死滅を誘導されるcrippledと呼ばれる変異をIg遺伝子に持つケースがみうけられることから、死すべき運命にあった胚中心B細胞であってもEBVに感染していたために生残、増殖してしまっているものであると考えられている。

 胚中心B細胞の生存、増殖には少なくともBCRとCD40からのシグナルが必要であるが、EBVはLMP2AとLMP1というそれぞれのレセプターの活性型のホモログをコードしており、これらがホジキンリンパ腫の成因として重要な役割を果たしている。この点からも、ホジキンリンパ腫が(I型ではなく)II型潜伏様式をとっていることの重要性が理解できる。EBV陽性ホジキンリンパ腫の増殖におけるEBV依存性は高いが、EBV陽性率は例えばほぼ100%陽性となるエンデミックバーキット等に比較すると低い。EBV陽性/陰性ホジキンリンパ腫の詳細な解析から、いずれにおいてもCD95/FAS、A20、RelといったNF-κBシグナルに関係する因子の変異が多く報告されており、NF-κBシグナルが構成的に活性化している状態であった。LMP1はNF-κBシグナルを活性化することを合わせて考えると、ホジキンリンパ腫においては、EBVによって、もしくはそれ以外の何らかの理由でNF-κBシグナルを活性化することが腫瘍性増殖に重要であることが強く示唆される。さらに、HLA多型の影響も多く報告されていること、AIDS患者でもホジキンリンパ腫が散見されることから、免疫の関与も示されている。

 臓器移植やAIDSなどによる免疫抑制に伴うB細胞リンパ増殖性疾患/リンパ腫にはEBVが随伴していることが多い。いわゆる日和見タイプの発症で、その分類は多岐にわたり、まとめて全体像を記述することが困難である。胚中心もしくは胚中心後B細胞由来で、免疫系による制御を受けにくいことからⅢ型という比較的多くウイルス遺伝子を発現する様式をとることが多く、ウイルス依存性も高い場合が多い。しかし例えば、AIDS関連のバーキットリンパ腫やホジキンリンパ腫ではそれぞれI型、II型となる。

 EBVはT、NK細胞にも感染し、増殖性疾患を引き起こすことがある。EBV陽性T/NK細胞増殖性疾患は特に東アジア地域で多く、また予後も悪い傾向にあり、我が国においても深刻な問題である。chronicactiveEBV(CAEBV、慢性活動性EBV感染症)、extranodalNK/Tcelllymphoma(ENKTL)、aggressiveNKleukemia(ANKL)の3つのクライテリアにおいてはほぼ全例でEBV陽性である。CAEBVにおいては、明らかな免疫疾患がないにも関わらずEBVがT細胞もしくはNK細胞に感染し、クローナリティーをもって増殖することが認められる。発熱、倦怠、肝脾腫、リンパ節腫脹のほか、蚊刺過敏症、種痘様水胞症、血球貪食症候群などを伴うことがある。ウイルスに対する一部のCTL活性が減弱しているとの報告があり、免疫系の関与もあると想定される。CAEBVの定義である発熱、倦怠、リンパ節腫脹を伴わない例も報告されており、この齟齬に対応すべく木村らはEBV関連T/NKリンパ増殖性疾患という定義を新たに提唱している。また一部のケースにおいて、CAEBVはさらに悪性化の転帰をとり、ENKTLやANKLになることが知られている。T/NK増殖性疾患/リンパ腫においてEBVはII型の潜伏様式をとることが多く、少なくともCAEBVの細胞増殖におけるLMP1の重要性を我々も確認している(Itoetal、CancerMed、inpress)。一方で、時間経過とともにLMP1、LMP2Aなどの発現は徐々に減じ、宿主ゲノムに変異が蓄積されていくようである。そのような変異として、TP53、K-Ras、β-catenin、FoxO3、Blimp1などの報告がある。上咽頭癌は特に中国南部で好発する上皮細胞の癌である。生検ではほぼ全例がEBV陽性であることから、invivoでのウイルス依存性は高いと推測されるが、分離培養した細胞ではほとんどの場合ウイルスが脱落して陰性となっている。II型もしくはI型の潜伏様式が見られることから、T/NKリンパ腫と同様徐々にウイルス遺伝子がサイレンシングされて、その発現が減弱していっているものと考えられる。上咽頭癌に随伴する変異として、Rassif1A、P16INK4A、TP53、Bcl-2、CyclinD1などが報告されている。疫学的にはEBVのほか、塩漬けの魚やタバコの消費との関連が知られており、またHLA多型との関連を示唆する論文も多い。

 胃癌の10%弱でEBVが陽性となっている。胃癌においてEBVはI型の感染様式をとっているが、培養細胞レベルでEBVを胃上皮細胞に感染させるとII型となることを我々は観察しているので、上咽頭癌同様デフォルトではII型と我々は考えている。胃癌ではデフォルトでI型との報告もあるが、いずれにしても感染直後にはabortiveな溶解感染をとることから、一時的にはLMP1、LMP2Aを発現しているはずであり、これらのがん遺伝子が胃癌の発生に関与している可能性がある。TP53、ARID1の変異が報告されているほか、P16INK4AやE-cadherinなどのサイレンシングもEBV陽性胃癌に随伴する事象として明らかにされている43-45)。上咽頭癌と胃癌、2つのEBV陽性上皮性悪性腫瘍において、いずれもその周囲に高度なリンパ球の浸潤が見られる。このような腫瘍組織に付随して生じるリンパ球の高度な浸潤は、EBV陽性がんの特徴といえる。

 2018/6/7