リウマチ性多発筋痛症の理論

 最近あちこちの有名大学病院でリウマチ性多発筋痛症という病名をつけられて、当院を訪れる患者さんが多くなりました。以前も同じ病名で受診される患者さんがいましたが、リウマチと同じだから病名はどうでもいいと一蹴し、この病名の意味づけを深く考えなかった頃がありました。リウマチとして何人か治した経験があります。ところがこの病名で受診される人が多くなり、普通のリウマチとは少し違うぞということがわかり始め、と同時に、その治療経過の中で出てくる症状も、従来のリウマチとは異なることに気がつくようになりました。

 言うまでもなく、先進国に見られる唯一のといってもよい程の人間の免疫に認識される敵は化学物質であります。この化学物質を処理する武器の違いによって、大きくアレルギーと膠原病に分けられます。アレルギーの症状はIgEが武器となり、膠原病の症状はIgGを武器として用いることによって病気の出方が違うだけなのです。どうして同じ敵と戦うときにIgEを用いるときとIgM、IgGを用いるときの違いが、このようにアレルギーと膠原病という大きな症状の違いを生み出すのかについて説明しましょう。

 みなさんはIgEやIgGが免疫抗体といわれることはご存じでしょう。さらに、この抗体と結びつく敵である異物を抗原といわれることもご存じでしょう。この敵である抗原を処理するときに、その処理の仕方が異なるので、人類は5種類の抗体という武器を進化させたのです。例えば、人間社会においても、社会の敵である人達を処罰するときに処罰の仕方が色々あるでしょう。人を殺せば死刑にするでしょうし、盗みの罪であれば投獄するように、罪の大きさによって刑罰が異なるように、人体に侵入した敵も、その人体に及ぼす罪の大きさによって対応するようになったのです。例えば、人体を殺そうとするウイルスや細菌に対してはIgMやIgGを用いて殺し尽くします。殺さないとこちらが死んでしまうからです。さらにこのような敵は人体に侵入する前にIgAを用いて腸管の粘膜や目や鼻や口や気管や膀胱などの粘膜から流し去ろうとすることもあります。最後に人体に侵入してしまった殺す必要がない化学物質に対しては、IgEを用いてアレルギーを起こして除去しようとします。またこのような化学物質は腸管や目や鼻や気管の粘膜から侵入しないように、同じようにIgEを用いて流し去ろうとするのです。

 それでは実際にこのような抗体はどんな仕事をしているのでしょうか?これらの抗体の仕事はただ単に様々な異物と結びつくことだけなのです。抗体というのは敵と結びつく両腕と一本のしっぽから成り立っており、Y字型になっております。両腕で敵と結びつくだけでは充分な仕事ができないのです。ただIgA抗体だけは結びつくことだけで仕事ができるので特殊な抗体といえます。IgAについては後で述べます。他のIgMやIgGやIgEはしっぽに免疫に関わる他の細胞や分子がついてはじめて仕事ができるのです。IgMやIgGが細菌やウイルスを殺すことができるのは、これらの抗体のしっぽにつく好中球や大食細胞が殺す仕事をしてくれるからです。つまりIgMやIgGの仕事は、両腕で敵を掴むことだけなのです。

 なぜこんな遠回りなことをしないで直接好中球や大食細胞にウイルスや細菌を掴まえさせ食べさせないのでしょうか?それはひとたび同じ敵に対してIgMやIgGが同じクローンのBリンパ球で作られ始めると、脾臓や骨髄で1秒間に2000個以上作られるので、好中球や大食細胞が骨髄で作られる度合いとは比べ物にならないからです。1秒間に2000個といえば、1分間に12万個、1時間に720万個、1日に1億7280万個であります。これは1個のBリンパ球だけの数字でありますから、ひとたび敵を認識できるBリンパ球がその敵と結びつき増殖しはじめると、1週間で同じクローンのBリンパ球が2万個に増えます。増えるだけではすぐに抗体ができるわけではないのですが、抗体を作り出す形質細胞に成熟しなければなりません。ここではじめて同じ抗体を作り始めるのであります。そうすると2万個が1日に1億7280万個つくりだすと、20000×1億7280万=3兆4560億個になります。さらにおなじアレルゲンを認識するクローンのBリンパ球は毎日1000個が血管やリンパ管やリンパ節に流れているといわれていますから、そのうち数個でも同じ敵を認識すれば、3兆4560億個の数倍となります。このような天文学的な数の抗体を作るからこそ、作るのに時間が1週間もかかるのですが、それまでウイルスや細菌に殺されない限りは人間は命を失うことはないのです。

 一方、好中球は1日に700億個作られるといわれますが、好中球の寿命は6時間~22時間であるといわれています。大食細胞は1日に数十億個作られるといわれますから、抗体の生産量にはかなうわけはありません。従ってこれらの好中球や大食細胞の仕事をしやすくするために、抗体は敵を捕まえる両腕のみならず、好中球や大食細胞をひっつけるしっぽを進化させたのです。つまり抗体が捕まえてきたウイルスや細菌をこのしっぽにひっつけて運んできた好中球や大食細胞がすぐに食べるように抗体が作り上げられたのです。

 さらに膠原病のIgG抗体についても同じことがいえるのです。元来、IgG抗体は上に述べたウイルスや細菌を殺すときに作られたのでありますが、化学物質に対しても同じようにIgG抗体を作って戦おうとするのです。好中球や大食細胞は、化学物質と結びついた一部のタンパク質は溶かし殺すのでありますが、溶かすことができない化学物質を結合組織に吐き出します。この結合組織に溜まった化学物質は、さらに結合組織のタンパクと結びつき、少しずつヘルパーT2リンパ球と結びつくと、これらのヘルパーT2リンパ球はサイトカインのひとつであるインターロイキン4を作り出して、クラススイッチを起こすAID遺伝子をONにし、今までIgMやIgGを作っていたBリンパ球にIgMやIgGからIgEに作り変えるようにさせて、膠原病をアレルギーにしてしまうのです。

 さらにアレルギーのIgE抗体について考えてみるまえに、ここでハプテンとキャリアータンパクに詳しく述べてみましょう。元来、Bリンパ球が抗体を作るためには絶対にTリンパ球の手助けが必要なのです。ところがTリンパ球はBリンパ球を手助けするためには、、まずTリンパ球自身がタンパクを異物と認識する必要があります。つまりTリンパ球はタンパクでない化学物質を異物と認識できないので、Bリンパ球を手助けすることはできないのです。一方、Bリンパ球は全ての異物を認識することができるのです。それではどのようにして化学物質がTリンパ球にとってもBリンパ球にとっても異物と認識されるのでしょうか?

 常々私が述べてきたように、化学物質がハプテンになり、この化学物質を運ぶキャリアータンパク質が結びつき、このハプテン・キャリアータンパク結合体のキャリアータンパクの方をT細胞が異物と認識し、ハプテンの方をBリンパ球が認識し、この両者の働きにより、この結合物に対して免疫反応を起こすのであります。このときIgGが作られ処理されると膠原病となり、IgEが作られ処理されるとアレルギーになるのです。従って膠原病もアレルギーも、この同じハプテンという化学物質に対して戦っているのであり、この戦いをIgGで殺す戦いからIgEで排除する戦いに変えれば、最後は免疫寛容を起こし、この化学物質であるハプテンと共存できるというのが私の自然後天的免疫寛容の理論の骨子であります。遠慮して私の理論という言葉使いをしましたが、これはまさに私が見つけた真実というべきものであります。

 ここで免疫寛容について述べておきましょう。もともと免疫寛容という言葉は、自己の成分に対しては免疫寛容を起こしているので、自己の成分を攻撃することはないという概念から生まれました。さらに自己に対する免疫寛容が破綻したときに、自己免疫疾患つまり膠原病が生まれるという理論が生まれました。ところが私に言わせると、自己免疫疾患などというのはあり得ない病気であり、従って治らない病気でもないのです。これについては、私は詳しく自己免疫疾患がない根拠を別の論文で書いていますから、それを読んでください。自己免疫疾患がない一番単純な回答は、一人の人間の細胞は全て同じ味方の旗印であるMHCを掲げているので、絶対に味方を攻撃しないのです。どこでも真実は単純で明快なものです。

 それではどのようにしてこのハプテン・キャリアータンパク結合体に対して抗体を作ることができるのでしょうか?抗体を作るには、まず異物を抗原提示細胞である樹枝状細胞や大食細胞やBリンパ球だけが持っているMHCⅡという自分の旗印と結びついて、これをヘルパーT細胞に提示する必要があります。このTリンパ球のヘルプがないと、Bリンパ球はIgG抗体やIgE抗体を絶対に作れないのです。ところがBリンパ球は、この世にあるあらゆる異物であるタンパク質、脂質、炭水化物のみならず、化学物質に対して、異物と認識することができるのです。一方、Tリンパ球はタンパクだけしか異物と認識することができないのです。

 ハプテン・キャリアータンパクを異物として免疫が働く時に生じる膠原病やアレルギーの場合は、まさにこのBリンパ球がハプテンを認識し、Tリンパ球がBリンパ球によって取り込まれたこの結合物の一部をMHCⅡと結びついたタンパクを認識し、刺激され、Tリンパ球がBリンパ球に抗体を作らせることができるのです。つまり、ハプテンをBリンパ球が認識し、キャリアータンパクをTリンパ球が認識して、両者の協力を得てトータルとして抗体を作ることができるのです。

 以上述べたハプテン・キャリアータンパクの理論は、化学物質である薬がどのようにして華々しい副作用を生み出すのかについても全て当てはまることなのです。つまり薬も人間にとって異物として認識される化学物質であるからです。この化学物質がハプテンとなり、体内のキャリアータンパクと結びついて抗原となり、これが免疫に認識されて薬という化学物質を排除しようとする正しい免疫反応を起こす副作用として出現し、これが新たなる医原病となるのです。このような事実を世界中のどんな医学者も薬学者も気がついていないところが現代医学の悲劇なのであります。薬の副作用が生じる原因が不明であると言い続けなければならない学問の真実性について、いつも私が疑問に思う点であります。

 さて本論に戻りましょう。なぜIgM、IgGの世界をIgEの世界に変わらなければならないのでしょうか?IgMやIgGは、既に述べたように、殺すべきウイルスや細菌を捕まえるだけであり、殺す仕事をしてくれるのは、この抗体のしっぽにくっつく殺し屋である大食細胞や好中球やNK細胞であります。これらの細胞は、IgMやIgG抗体が見つけてくれたハプテン・キャリアータンパク結合体を酵素や活性酸素で殺し溶かそうとします。キャリアータンパクは簡単に溶けてしまうのですが、ハプテンである化学物質はいつまでも消えないのです。このハプテンがいつまでも結合組織に蓄積されるとともに、このハプテンが炎症を起こした結合組織の自己のタンパクと結びついて、再びハプテン・キャリアータンパク結合体を大量に作り続け、数少ないヘルパー2Tリンパ球と結びつき始めます。ヘルパー2Tリンパ球は徐々にインターロイキン4を作り出し、このサイトカインはIgM、IgGを作っているBリンパ球に結びつき、AID遺伝子をONにさせIgEにクラススイッチさせてしまうのです。作られたIgEは、組織に大量に見られる肥満細胞、さらに好塩基球と結びつき、最後に好酸球とも結びついて、これらの細胞から大量のヒスタミンやブラジキニンを出させて、様々なアレルギー反応を起こすのであります。

 以上がリウマチ性多発筋痛症の症状の免疫学的な説明であります。